【賃貸トラブル】更新時に「名義変更」と言われたら?審査なしのリスクと正しい手続きの手順

【賃貸トラブル】更新時に「名義変更」と言われたら?審査なしのリスクと正しい手続き

こんにちは、暮らしっく不動産です。
今回は、実際にあったご相談事例をもとに、賃貸物件のオーナー様や契約担当者様にぜひ知っておいていただきたい「名義変更(契約者変更)」の落とし穴についてお話しします。

更新のタイミングで「契約者を別の人に変えたい」と言われたとき、あなたはどのように対応しますか?
単なる書類上の書き換えだけで済ませてしまうと、後々大きなトラブルに繋がる可能性があります。

実際にあった相談事例:法人契約の更新時

先日、あるお客様から賃貸更新についてのご相談を受けました。
内容は以下の通りです。

相談内容:
  • 12月に更新を迎える「法人契約の飲食店店舗」物件。
  • 更新時に「契約者が変わる」と言われた。
  • 新しい契約者は外国籍の女性。
  • 管理会社は審査もせず手続きを進めようとしている。

相談者様は「少しおかしいと思うんだけど」と不安を感じていらっしゃいました。
結論から申し上げます。
その直感は正しいです。普通に考えて、おかしい(危険な)状況です。

私は即座に、「契約者が変わる場合は、必ずもう一度審査をきちんとすることをお勧めします」とアドバイスさせていただきました。

なぜ「名義変更」を軽く見てはいけないのか?

不動産実務において、契約者が変わる(名義変更)ということは、単なる名前の修正ではありません。
「法的な支払い義務者が変わる」=「実質的な新規契約」と同義です。

これまでの実績はリセットされる

前契約者がどれほど優良な入居者で、家賃の滞納がなかったとしても、それは新しい契約者には関係ありません。
新しい契約者に支払い能力があるのか、信頼できる人物(または法人)なのかは、全くの別問題です。

⚠ ここがリスク!
審査をせずに名義変更をするということは、「どこの誰かわからない相手、支払い能力が不明な相手に、大切な資産を貸す」ことと同じです。

管理会社の対応に注意してください

今回のご相談で特に驚いたのは、管理しているのが「昔からある老舗の有名不動産会社」だったにもかかわらず、審査もせず、新契約者の身分証や収入証明の提示も求めずに更新を進めようとしていた点です。

事務手続きを簡略化したいという管理側の都合で、オーナー様のリスクチェックを省かれてしまっては本末転倒です。
「昔からの付き合いだから」と安心せず、必要な手続きが踏まれているかを確認する必要があります。

名義変更の正しい手続きフロー

トラブルを未然に防ぐために、契約者変更の申し出があった際は、以下の手順を徹底しましょう。
これは一般住宅でも、店舗・事務所でも同様です。

  1. 変更理由のヒアリング
    なぜ名義を変える必要があるのか、背景を確認します。
  2. 申込書の提出と書類確認
    新しい契約者の身分証明書、収入証明書(決算書や納税証明書)を提出してもらいます。
  3. 入居審査(再審査)の実施
    支払い能力はあるか、反社会的勢力ではないか、連帯保証人は確保できるか等を厳格に審査します。
  4. 新契約(または覚書)の締結
    審査を通過して初めて、契約書類への署名・捺印を行います。

まとめ:審査は「貸す側の権利」であり「義務」

契約者が変わる場合は、「名義変更」という言葉に惑わされず、「新規契約」と同じレベルで審査を行うこと。これが鉄則です。

もし、管理会社から「更新ついでに名前だけ変えておきますね」といった軽い提案があった場合は、「新しい方の審査書類を見せてください」と必ず伝えるようにしてください。
それが、オーナー様ご自身と物件を守るための最も重要な防衛策となります。


※本コラムは一般的な不動産実務に基づいた見解です。個別の契約内容や事情により対応が異なる場合があります。