「なんとなく」を数値化する。
フェルミ推定で始める、賢い部屋探しの技術
「部屋探し、疲れませんか?」
膨大な数の物件情報、見れば見るほど迷ってしまう条件設定。「駅徒歩10分」「広さ6畳」「家賃8万円」……画面には数字がたくさん並んでいますが、実際の生活がどうなるのか、いまいち想像できない。そんな経験はないでしょうか。
情報が多すぎて選べない時、あるいは情報が少なすぎて不安な時。 ビジネスの現場で使われる思考法「フェルミ推定」を、部屋探しに応用してみるのはいかがでしょうか。
今回は、正確な答えではなく「精度の高い概算(あたり)」をつけることで、部屋探しの効率と満足度を劇的に上げるテクニックをご紹介します。
そもそも「フェルミ推定」とは?
「フェルミ推定」とは、調査するのが難しい捉えどころのない数量を、いくつかの手がかりを元に論理的に推論し、短時間で概算することです。
有名な例題に「日本にピアノ調律師は何人いるか?」というものがあります。
普通なら調べようもない数字ですが、以下のように既知の数字を掛け合わせることで、論理的に導き出すことができます。
推定のロジック例
- 日本の世帯数: 人口1億2,000万人 ÷ 1世帯2.5人 = 約4,800万世帯
- ピアノの普及率: 10軒に1軒持っていると仮定(10%) = 約480万台
- 調律の頻度: 1年に1回調律すると仮定 = 年間480万回の依頼
- 調律師の稼働: 1人あたり1日2件 × 年間250日稼働 = 1人あたり年間500件対応
- 必要な人数: 480万回 ÷ 500件 = 9,600人
実際、タウンページなどに登録されている調律師の数もこれに近い数字だと言われています。
実際のデータとの答え合わせ
ちなみに、総務省統計局の「平成26年全国消費実態調査」によると、二人以上の世帯におけるピアノの普及率は23.5%となっています。 推定の10%よりも高い数字ですが、「所有はしているが、調律して弾き続けている家庭(稼働率)」と考えれば、あながち外れていない数字と言えるかもしれません。
参考:総務省統計局 平成26年全国消費実態調査(主要耐久消費財の所有状況)このように「なんとなく」ではなく、要素を分解して計算することで、「だいたいこれくらいだろう」という確からしい数字が見えてくるのです。
これを部屋探しに応用すると、どうなるでしょうか。 ポータルサイトに書かれている「スペック(表面的な数字)」を、あなたの生活実態に合わせた「リアルな数字」へと変換することができるのです。
実践編:フェルミ推定で見る「3つの隠れた数字」
では実際に、部屋探しで陥りやすい3つの罠を、フェルミ推定の考え方を使って「見える化」してみましょう。
Case 1 本当の「通勤時間」を推定する
ポータルサイトで「駅徒歩10分」の物件を見つけたとします。電車に乗っている時間が15分だとすると、「通勤時間は25分くらいか」と計算しがちです。
しかし、これはあくまで地図上の最短距離の話。毎日の通勤ストレスを減らすために、もう少し解像度を上げて推定してみましょう。
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部屋からエントランスまで
(3階以上、エレベーター待ち含む) +2分 -
道中の信号待ち
(信号3つと仮定) +3分 -
駅の改札からホームまで
(地下鉄・混雑考慮) +3分 - 電車の遅延・乗り換えバッファ +5分
Case 2 本当の「家賃(ランニングコスト)」を推定する
「家賃8万円」と「家賃8.5万円」の物件。普通に見れば5,000円安いほうが「お得」です。しかし、ここでも隠れたコストを推定してみましょう。
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ガスの種類
(プロパンガス vs 都市ガス) 月+3,000円〜 -
建物の断熱性能による光熱費
(木造築古 vs RC断熱) 月+2,000円〜 -
更新料の月割り換算
(2年で1ヶ月分の場合) 月+約3,300円
Case 3 自分の荷物と「有効面積」を推定する
「6畳あれば一人暮らしには十分だろう」。なんとなくの感覚で広さを決めていませんか? 6畳は約10平米ですが、ここから「生活に必要なスペース」を引き算してみましょう。
- 必須家具(ベッド・デスク・収納):- 4㎡
- 死にスペース・動線(ドア開閉等):- 3㎡
- 自由に使える床面積:残り 3㎡
フェルミ推定で部屋探しをするメリット
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1
内見の無駄足が減る
「行ってみたら駅から遠かった」「思ったより狭かった」という失敗を、図面とデータの段階で回避できます。
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2
不動産屋への相談が具体的になる
「なんとなくいい部屋」ではなく、「実質コストが月9万円以下」といった具体的なオーダーが可能になり、より良い提案を受けやすくなります。
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3
決断に納得感が生まれる
「ロジック」で選んだ部屋なら、住んだ後も「ここは計算通り、ここは想定内」と納得して住み続けることができます。
まとめ:自分なりの「物差し」を持とう
部屋探しは情報の海です。ポータルサイトを延々と眺めていると、何が正解なのかわからなくなってしまいます。
そんな時こそ、フェルミ推定の出番です。「ざっくりと、しかし論理的に」数字を出すことで、自分なりの「物差し」を持つことができます。
もし、その計算が面倒だったり、
「ガスの相場って?」「断熱性能の見分け方は?」
といった前提データがわからない場合は、
ぜひ私たちにご相談ください。
プロの知見とデータを掛け合わせ、あなたの代わりに精度の高いシミュレーションを行い、論理的な部屋探しをサポートいたします。
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