こんにちは、暮らしっく不動産の門伝です。
今日は、賃貸物件の「退去費用」についてお話しします。
実は、知識がないだけで数万円〜十数万円も損をしているケースが後を絶ちません。
かつてTwitter(現X)で非常に大きな話題になった、こちらの衝撃的な事例をご存知でしょうか?
賃貸の立会い確認が終了。予想通りガイドライン無視(耐用年数)の金額が提示された。そのことを不動産屋に伝えると、「ご存じでしたか?!」と言って即時に訂正された。5万円の支払いが6千円の敷金返金に変わった。無知では毟り取られる世の中。
2016年7月31日「ご存じでしたか?!」という不動産屋の言葉、恐ろしいですよね。
この事例は数年前のものですが、今でも同じようなことは頻繁に起きています。むしろ、知らないとボッタクリに遭う確率は依然として高いままです。
しかし、以前と違う嬉しいニュースもあります。
2020年4月の民法改正により、入居者を守るルールが「法律」としてより明確になったのです。
今回は、損をしないために絶対に知っておくべき「退去費用の新ルール」と、コピペで使える「魔除けのテンプレート」を公開します。
- 民法改正で「ガイドライン」が「法律」のルールへ強化された
- 「残存価値」を知れば、壁紙の張り替え代を全額払わなくて済む
- 業者を牽制する最強のテンプレート「退去の魔除け」配布
1. 「ガイドライン」から「法律」へ
退去時の費用負担については、以前から国土交通省が「原状回復をめぐるガイドライン」を出していました。
基本的な考え方は以下の3つです。
- 大家さん負担:
普通に生活していてできた傷や汚れ(経年劣化・通常損耗)。 - 入居者負担:
不注意や故意で壊してしまった部分。 - 負担割合の計算:
修理が必要でも、新品価格を全額払う必要はない(長く住めば負担は減る)。
これらは以前はあくまで「ガイドライン(指針)」でしたが、2020年4月以降は民法改正により法的根拠が強まりました。
つまり、不当な請求に対しては、以前よりも自信を持って「No」と言えるようになったのです。
2. 修理が必要でも「全額負担」ではありません
ここが一番の勘違いポイントです。
もしあなたの不注意で壁紙を汚してしまい、張り替えが必要になったとします。
それでも、費用の全額をあなたが払う必要はありません。
ここで登場するのが「残存価値(ざんぞんかち)」という考え方です。
- 物は時間が経てば価値が下がる。
- 入居者が負担するのは、その「下がったあとの価値(現在の価値)」の部分だけ。
入居者の負担額 = 修理費用 × (現在の価値の割合)
例えば、壁紙(耐用年数6年)の場合、6年住めば価値はほぼ1円(または0%)になります。
つまり、6年以上住んで退去する場合、仮に壁紙を汚していても、費用負担はほとんど発生しないのが国交省のルールです。
(※詳しい計算例は、以前の記事『高額な退去費用の請求には注意しよう!』をご覧ください)
3. コピペで使える「退去の魔除け」
「法律やガイドラインと言われても、不動産屋に言いくるめられそう…」
そんな方のために、社宅代行などで使われる専門的なチェックシートを、一般向けにアレンジした書類を作成しました。
名付けて「退去の魔除け」です。
なぜこの書類が効くのか?
ポイントは、文中にあえて「改正民法 第621条」という具体的な法律名を入れている点です。
この書類を退去の申し込み時や、立ち会い前に渡す(またはメールする)ことで、相手に以下のメッセージを強烈に伝えることができます。
「この入居者はガイドラインも法律も理解している。下手な請求をしたら面倒なことになるぞ」
これは喧嘩をするためのものではなく、「お互いにルールを守って気持ちよく終わりましょう」という意思表示です。
以下のテキストをコピーして、メールや文書作成ソフトに貼り付けてご使用ください。
[ 202〇 ] 年 [ 〇 ] 月 [ 〇 ] 日
オーナー様・管理会社ご担当者様
(賃借人)
現住所: 〒[ 000-0000 ] [ ご住所を入力 ]
氏名 : [ お名前を入力 ] 印
退去・解約に伴う原状回復費用見積り等のご依頼
拝啓
時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。 平素は大変お世話になっております。
さて、このたび賃貸借契約を解約し、退去することとなりました。つきましては、退去および原状回復の手続きに関して、以下の通り申し入れいたします。
-
原状回復費用見積書の送付について
退去立会い終了後、退去(立会い)日より2週間以内に「原状回復費用見積書」の送付をお願いいたします。 -
ガイドラインおよび改正民法に基づく精算のお願い
原状回復費用の算出にあたっては、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改定版)」および改正民法(2020年4月1日施行)第621条の規定に則った内容でお願いいたします。- 経年変化・通常損耗について:
自然消耗(経年劣化)および通常の使用による損耗、責任区分が不明確なものにつきましては、貸主様のご負担にてお願いいたします。 - 故意・過失による修繕について:
借主の故意・過失等が認められる修繕箇所につきましても、新品価格そのままの請求ではなく、入居期間による減価償却(経過年数)を考慮した借主負担割合にて算出をお願いいたします。
- 経年変化・通常損耗について:
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精算手続きについて
敷引き契約等で返還金がない場合や、敷金が0円で追加請求等が発生しない場合につきましても、精算完了のエビデンスとして「精算書(請求なし)」の送付をお願いいたします。
見積書または精算書の内容を確認させていただいた後、速やかに手続きを進めさせていただきます。
円滑な明け渡しと精算完了に向け、何卒よろしくお願い申し上げます。
敬具
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まとめ:知識は自分を守る盾になる
残念ながら、知識のない入居者に高額な請求をする業者はまだ存在します。
しかし、ガイドラインが浸透し、法律も改正された今、正しい知識があれば怖くありません。
「退去の魔除け」を活用して、無駄な出費を防いでください。
不動産業界がもっと透明でクリーンになることを願って、これからも情報を発信していきます。
それではまた!
