結論:2026年の法定研修で強く感じたのは、不動産会社の「確認すること」が年々増えているということです。お客様からすると手間に見える確認にも、ちゃんと理由があります。
ここが大事:理由を知っていれば、不動産会社に聞かれたときに安心して答えられます。逆に、聞いてはいけないことを聞いてくる会社にも気づけます。
まずはここから!
- ハザードマップは、不動産会社の説明とは別に自分でも最新版を見る
- 連帯保証人を頼む・頼まれるときは、「更新しても保証は続く」ことを知っておく
- 2027年4月からは、対面でも身分証のICチップを読み取る本人確認が始まる
こんにちは。暮らしっく不動産の門傳です。
2026年10月、不動産保証協会 東京都本部の法定研修会を、オンラインで受講しました。宅建業法にもとづいて、不動産会社が定期的に受ける研修です。

受講後に届いた研修済証
正直に言うと、昔は「研修なんてつまらないもの」と思っていました。でも今は、世の中の変わり方がとても速く、毎年かならず「これは変わったのか」という話があります。研修は、とても有意義な時間になりました。
研修の中身は不動産会社向けですが、部屋を借りる方・家を買う方にも知っておいてほしい話がたくさんありました。この記事では、その中から5つを選んで、私なりの言葉でまとめます。
目次
申込書に「本籍」「国籍」の欄はいらない
最初の講義は、東京都の担当課長による「人権の尊重と個人情報の保護」でした。毎年ある講義ですが、毎年いちばん大事な話だと思っています。
東京都がはっきり求めていることは、次のとおりです。
- 入居の申込書に「本籍」や「国籍」の欄を設けない。入居とは関係のない情報だからです
- 「この物件は同和地区ですか」という質問には答えない。「違います」と答えることも含めて、差別につながるからです
- 外国籍の方、障害のある方、高齢の方、ひとり親家庭であることだけを理由に、入居を断らない
研修では、「大家さんから『外国の方は断ってほしい』と言われていたら、断ってもよいか」という問題も出ました。答えは「×」です。大家さんに営業の自由はありますが、合理的な理由のない入居拒否は許されません。
ただ、現場の実態をお話しすると、「外国籍の方は不可」「高齢の方は不可」という大家さんは、まだ多いです。大家さんにとってはリスク管理の面もあり、その気持ちも分かります。たとえば高齢の方の一人暮らしでは、部屋で亡くなって発見が遅れることへの不安があります。外国籍の方では「保証人がいない」「生活のルールが伝わるか心配」という声をよく聞きます。
こうした不安は、保証会社や、外国の方向けの生活ガイド、高齢の方の見守りサービスなどで、かなり小さくできます。「不可」で終わらせずに、こうした仕組みを大家さんに紹介して、貸せる部屋を少しずつ増やしていく。それも私たち不動産会社の仕事だと思っています。
また、成約しなかった申込書は、返却するか、外に漏れないように裁断して処分することも、あらためて求められていました。
ハザードマップは「説明されたもの」だけ見ればいいわけではない
2つ目は、不動産適正取引推進機構(RETIO)の講師による事例の講義です。最初の事例は、こんな相談でした。
中古の戸建てを買って住み始めたあと、町内会から配られた浸水(内水)のハザードマップを見たら、自宅のまわりは1mほどの浸水が想定されていた。そのマップは契約の3年前に公表されていたのに、不動産会社からは説明がなかった。
重要事項説明で、不動産会社に説明が義務づけられているハザードマップは、水防法にもとづくもの(洪水・内水・高潮)です。それ以外のマップは、法律上の説明義務まではありません。
ただし、だから説明しなくていい、ということにはなりません。国土交通省は、水防法にもとづくかどうかに限らず、ハザードマップを示して情報を提供するよう不動産会社に依頼しています。判断に大きく関わることをわざと伝えなければ、宅建業法違反になる可能性もあります。
もうひとつ大事なのは、ハザードマップは変わるということです。対象になる川が大幅に増え、市区町村のマップは順次新しくなっています。研修では、東京都港区が2026年7月に新しいマップを公表した例も紹介されていました。
部屋探しや家探しのときは、不動産会社の説明を聞いたうえで、ご自身でも市区町村の最新のハザードマップを見ておくことをおすすめします。東京23区のハザードマップの探し方は「東京23区のハザードマップはどこで見る?」でまとめています。
連帯保証人の責任は、更新しても続く
賃貸の事例では、連帯保証人の相談が取り上げられました。
兄の賃貸アパートの連帯保証人になった。約5年後、兄が室内で急病で亡くなり、管理会社から特殊清掃の費用と、家賃2年分の支払いを求められた。契約は2年で、その後は法定更新になっていた。
研修での答えを、私なりにまとめるとこうです。
- 契約が更新されても、保証は続く:「最初の2年だけ」ではありません。特別な事情がない限り、更新後の分も保証人が負います
- 相続放棄をしても、保証人としての責任は残る:相続放棄で引き継がなくなるのは、亡くなった方の借金です。保証人自身の責任は別です
- 特殊清掃の費用は、払う必要がある:通常の傷みや経年劣化とは言えないからです。亡くなった理由には関係ありません
- 家賃2年分は、自然死なら認められた例は見当たらない:室内で自ら命を絶ったケースでは、2年分の家賃相当額の支払いが命じられた裁判例があります。一方、病気などの自然死では、少なくとも今のところ、そうした賠償が認められた例はないとのことでした
家族に「保証人になって」と頼まれると、断りにくいものです。でも、保証人の責任は思っているより長く、重いことがあります。頼む側も頼まれる側も、このことは知っておいてほしいと思いました。最近は、保証人の代わりに保証会社を使う契約が増えています。保証人と保証会社の違いは「賃貸の連帯保証人と家賃保証会社」で説明しています。
なお、部屋で人が亡くなった場合に、次に借りる人へ伝える必要があるかどうかは、国土交通省のガイドラインで目安が決められています。くわしくは「事故物件とは?告知義務のルール」で説明しています。
「お金の出どころ」を聞かれる理由
3つ目は、マネー・ローンダリング対策が専門の弁護士による講義でした。不動産は、犯罪で得たお金を「きれいなお金」に見せかけるのに使われやすいのだそうです。
- 1件の金額が大きい
- 価値を長く保てる
- 家族や会社の名義を使いやすい
- 家賃や売却益という、正当な収入に変えられる
研修資料によると、不動産会社が「疑わしい取引」として届け出た件数は、2022年が11件、2023年が18件、2024年が25件でした。それが2025年は325件、2026年は最初の3か月だけで204件と、急に増えています。
そのため、家の売買では、不動産会社が次のようなことを確認します。
- 買う目的(自分で住むのか、投資なのか)と、お仕事
- 会社で買う場合は、その会社を実際に動かしている人
- 契約する人と、お金を振り込む人が違う場合は、その理由
- 多額の現金で払う場合は、そのお金の出どころ
講義の中で、「言い方」の話があったのが印象に残りました。「怪しいお金ではないですよね」ではなく、「当社の取引の審査で、購入資金を確かめる資料をお願いしています」と伝える、というものです。
お客様を疑っているわけではありません。決まりとして、どのお客様にも同じように確かめています。もし不動産会社から資料をお願いされたら、そういう理由だと思ってください。
2027年4月から、本人確認が変わる
本人確認のルールも変わります。
- 非対面(郵送やオンライン):身分証の画像やコピーだけで確認する方法のうち、なりすましの危険が高いものが廃止・縮小されます
- 対面:身分証を見せてもらうときも、マイナンバーカードや運転免許証などのICチップを読み取り、券面と照らし合わせる方法になります
新しいルールは、2027年4月1日から始まります。家の売買の契約では、身分証のICチップを読み取らせていただく場面が増えると思います。
この本人確認のルールは、主に家の売買(犯罪収益移転防止法の対象になる取引)の話です。賃貸の申込みや契約でも同じようにICチップを読み取るかどうかは、暮らしっく不動産としてこれから検討します。
研修を受けて、私たちが続けること
今回の研修を通して感じたのは、不動産会社に求められる「確認」が、年々増えているということです。人権への配慮、ハザードマップ、保証、お金の出どころ、本人確認。どれも、お客様と大家さん、そして街の安全を守るためのものです。
確認が増えると、お客様にとっては手間に感じることもあると思います。だからこそ、「なぜそれを聞くのか」を分かりやすく伝えることが大事だと、あらためて思いました。
昔は退屈だと思っていた研修も、今は「お客様に伝えるべきこと」を確かめる大事な場になりました。
分かりにくい不動産を、分かりやすく。これからも、学んだことをお客様にお伝えしていきます。
よくある質問
法定研修とは何ですか?
宅建業法にもとづいて、不動産会社の団体(保証協会)が、所属する会社に行う研修です。法律の改正や、実際のトラブルの事例などを学びます。
入居の申込書に本籍を書く欄がありました。書かないといけませんか?
本籍や国籍は、入居とは関係のない情報です。東京都も、こうした欄のある申込書を使わないよう不動産会社に求めています。書く必要があるか、不動産会社に確かめてみてください。
連帯保証人になっていた家族が亡くなりました。相続放棄すれば、何も払わなくていいですか?
相続放棄をしても、保証人としての責任はなくなりません。ただし、請求された金額がすべて正しいとは限りません。内容に納得できないときは、弁護士などの専門家に相談してください。
家を買うとき、なぜ仕事や資金のことを聞かれるのですか?
犯罪で得たお金が不動産に使われるのを防ぐため、法律で確認が求められているからです。どのお客様にも同じように確かめています。
株式会社ラインズマン
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この記事の執筆者
執筆:門傳 義文(株式会社ラインズマン 代表取締役/宅地建物取引士/FP2級)
