結論:事故物件とは、主に前の入居者が室内で亡くなった部屋など、住む人が心理的に抵抗を感じる「心理的瑕疵」がある物件です。

ここが大事:2021年10月に国のガイドラインができ、告知が必要な範囲の目安が示されました。

まずはここから!

  • 図面の「告知事項あり」を見落とさない
  • 気になる物件は申込み前に不動産会社へ質問する

事故物件とは

一般に「事故物件」と呼ばれるのは、前に住んでいた人がその部屋や敷地内で亡くなった物件です。不動産の取引では、住む人が心理的に抵抗を感じるような事情を「心理的瑕疵(しんりてきかし)」と呼びます。

インターネットの普及で、以前はわかりにくかった不動産の情報も少しずつ見えるようになりました。この記事では、事故物件の意味、告知のルール、部屋探しで確かめる方法を、落ち着いて整理します。

不動産の「瑕疵」は4種類

「瑕疵」とは、本来あるべき状態や性質が欠けていることです。不動産の瑕疵は、大きく4つに分けられます。

種類 内容 例
物理的瑕疵 建物や土地そのものの欠陥 直せない雨漏り、強度不足など
法律的瑕疵 法律による利用の制限 土地を買ったが、建築基準法の制限で家を建てられないなど
環境的瑕疵 物件ではなく、周りの環境の問題 近くの工場の騒音など
心理的瑕疵 物件にも周りにも物理的な問題はないが、使うことに心理的な抵抗を感じる事情 室内での死亡、近くに暴力団事務所があるなど

一般に「事故物件」といわれるのは、このうち心理的瑕疵のある物件です。心理的瑕疵は人によって感じ方が違い、線引きがあいまいなため、扱いが難しい分野です。

心理的瑕疵が争われた例

裁判では、次のようなケースが心理的瑕疵として争われてきました。

  • 近くに暴力団事務所があり、組員が深夜まで騒いで住み心地が悪い(東京地裁 平成9年7月7日判決)
  • 前の入居者が性風俗特殊営業に使っていた(福岡高裁 平成23年3月8日判決)
  • 自殺があった部屋を、大家さんが事情を知りながら説明せずに貸した(東京地裁 平成19年8月10日判決。説明が必要と判断されました)

心理的瑕疵の考え方が初めて示されたのは、不動産ではなく自動車の売買だったといわれます(松山地裁 昭和35年8月5日判決)。納車前に死亡事故を起こしていた新車について、新品とはいえないとして損害賠償が認められました。

「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」へ

2017年の民法改正(債権法の改正)で、これまでの「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」という考え方に変わりました。

以前は、責任を問うには「隠れた瑕疵」であること、つまり買った人や借りた人が知らなかった欠陥であることが必要でした。新しい民法では、この「隠れた」という条件がなくなりました。ポイントは「渡されたものが契約の内容に合っているか」です。

心理的瑕疵についても、契約の前にどんな説明を受け、契約書に何が書かれているかが、これまで以上に大切になります。説明された内容は、契約書や重要事項説明書で必ず確かめましょう。

事故物件の告知義務

不動産会社は、宅地建物取引業法で、相手の判断に重要な影響を与えることを故意に伝えなかったり、事実と違うことを伝えたりすることを禁じられています(宅地建物取引業法 第47条)。自殺や暴力団事務所などの心理的瑕疵も、この「判断に重要な影響を及ぼす事項」に入ると考えられてきました。

「知っていたら契約しなかった」と思うのは自然なことです。大家さんや不動産会社が事故物件であることを隠して貸した場合、借りた人は契約の取り消しや損害賠償を求められる可能性があります。

国のガイドライン(2021年10月)

以前は「どこまで伝えればよいか」の決まった基準がなく、会社によって対応がばらばらでした。そこで国土交通省は、2021年10月に「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を公表しました。

おおまかな内容は次のとおりです。

  • 自然死や、日常生活の中での不慮の死は、原則として告知しなくてよい
  • 賃貸では、それ以外の死があった場合でも、おおむね3年が経てば原則として告知しなくてよい
  • ただし、事件性や周知性、社会に与えた影響が特に高い場合などは別に扱われる

細かい条件や例外があるので、実際の扱いは物件や管理会社によって違います。気になる場合は、不動産会社に直接たずねてください。

部屋探しで事故物件を確かめる方法

1. 図面の「告知事項あり」を見る

事故物件 図面

不動産広告に「事故物件」と書く決まりはありません。ただ、上の図面のように、条件欄に小さく「告知事項あり」と書かれていることがあります。これは、契約前に伝えておくべき事情がある、という意味です。人の死に関することのほか、ほかの事情の場合もあります。

「告知事項あり」を見つけたら、どんな内容なのかを申込み前に確認しましょう。重要な事情は「重要事項説明書」でも説明されます。

2. 不動産会社に直接たずねる

図面に書かれていなくても、気になるときは「この部屋や建物で、告知が必要な事情はありますか」と聞いてかまいません。答えはメールなど、記録に残る形でもらっておくと安心です。口約束より書面を確かめる理由は「賃貸で「聞いてた話と違う」を防ぐには?」で説明しています。

3. 事故物件の情報サイトは参考程度に

事故物件 大島てる

事故物件の場所を地図上で紹介している民間のサイトもあります。ただし、すべての事故物件が載っているわけではなく、載っていない事故物件も多くあります。反対に、載っている情報が正しいとも限りません。参考の一つとして使い、最終的には不動産会社に確認しましょう。治安や災害など、住む場所の調べ方は「住む場所を決めるときに役立つ調べ方」で紹介しています。

4. 数は多くない

2014年12月13日時点で、東京都内でレインズに載っていた事故物件は24件でした(暮らしっく不動産調べ)。都内で募集されている部屋の数から見ると、ごく一部です。

事故物件に住むという選択

事故物件は、家賃が相場より安く設定されている場合があります。気にならない人にとっては、選択肢の一つになります。家賃が安くなるほかの理由は「相場より安い賃貸物件の9つの理由」で紹介しています。

暮らしっく不動産にご相談に来た方の中にも、予算の都合で「とにかく安い部屋を」と希望され、事情を承知のうえで事故物件に入居した方がいます。この記事を最初に書いた2014年の時点で1年半ほど住んでいましたが、特に問題があったという連絡はありませんでした。

大切なのは、事情を知ったうえで自分で決めることです。

  • 図面の「告知事項あり」を見落とさない
  • 気になる物件は、申込み前に不動産会社へ質問する
  • 家賃の安さと、自分の気持ちの両方で判断する

おとり物件など、ほかの注意点は「おとり物件の見分け方」の記事も参考にしてください。