結論:重要事項説明を受けて契約書にサインする前の申し込みの段階なら、キャンセルできます。預けたお金は全額戻るのが原則です。

なぜ重要か:契約が成立した後は、契約書に従って精算されます。どの段階かで戻るお金が変わります。

次にすべきこと:

  • 今どの段階かを確認する
  • キャンセルするなら一刻も早く連絡する

賃貸の契約キャンセルは、重要事項説明を受けて契約書にサインする前、つまり申し込みの段階までならできます。申し込みの段階で預けたお金(申込金や、先に振り込んだ敷金など)は、全額返してもらうのが原則です。一方で、契約が成立した後は、契約書の内容に従ってお金の精算が行われます。

暮らしっく不動産の徳留です。ネットで調べてみると、「賃貸 キャンセル」という言葉で調べている人が一定数いることがわかりました。たしかに、色々な理由でキャンセルせざるを得ないときはありますよね。

  • 転勤が急に決まった
  • 親族が病気になった
  • 他にいい物件を見つけてしまった

10人いれば10通りの理由があると思います。多くの方が心配しているのは、キャンセルしたらお金はどうなるのか、というところだと思います。

キャンセルできるのは契約書にサインするまで

契約には署名・捺印が必要です。重要事項説明を受けておらず、契約書にサインをしていない状態であれば、キャンセルできます。最近はオンラインでの重要事項説明(IT重説)や電子契約も増えています。その場合は、電子署名や同意の操作を終える前であれば、同じように考えてかまいません。重要事項説明で何を説明されるかは「賃貸の重要事項説明書をわかりやすく解説」をご覧ください。

一般財団法人不動産適正取引推進機構のホームページ(「契約の解除と支払金の返還」のQ&A)にも、そのような内容が書かれています。紹介されている相談と回答を、短くまとめると次のとおりです。

相談の例:振り込んだ敷金から違約金を引くと言われた

来週契約する予定で、詳しい説明は受けていないけれど、不動産会社に言われて敷金などを先に振り込んだ。その後、親が急に入院することになり、契約できないと連絡したら「違約金として家賃の1か月分を差し引く」と言われた、という相談です。

回答の要約:契約が成立しているかどうかで変わる

  • 重要事項説明を受け、借りる人が契約書に押印し、貸す人も契約を承諾したうえで敷金などを振り込んでいれば、契約は成立していると考えられる。その場合は、契約に従って敷金などが精算される
  • この相談のように重要事項説明もまだなら、契約前の申し込みの段階と考えられる
  • 宅建業法では、申し込みが撤回されたとき、不動産会社は預かったお金を返さなければならないとしている(回答では宅建業法47条の2第3項が挙げられている)
  • そのため、申し込みの段階なら自己都合で撤回しても違約金は発生せず、不動産会社は預かった敷金などを全額返す必要がある

カギになるのは、契約を結んだ状態なのか、そうでないのか、というところです。重要事項説明の前にお金を振り込むことについては、重要事項説明の前に入金するのは違法?でくわしく書いています。

申し込みから入居までの流れと、キャンセルの区切り

教科書的に言えば、次のような段取りで入居まで進んでいきます。

  1. 内見
  2. 申し込み
  3. 審査(保証会社や大家さん)
  4. 契約書の作成、入金の確認
  5. 契約
  6. 鍵渡し

※物件や不動産会社によって、順番が入れかわることもあります。

法律的に言えば、5の契約まではセーフ、ということになります。どの段階にいるかわからないときは、担当の不動産会社に「今は申し込みの段階ですか、契約は成立していますか」と聞いてみてください。申し込み日と契約日の違いは申し込み日と契約日の違いで、内見前に申し込む場合の注意点は先行申し込みと先行契約の違いで紹介しています。

たくさんの人が動いていることもお忘れなく

とはいえ、5の契約の段階に行くまでに、どれほどの人が動いているか考えてみましょう。

  • 仲介会社の担当
  • 大家さん
  • 保証会社
  • 管理会社の担当
  • 契約書を作るスタッフ

かなりの人数が動いています。たとえば家賃交渉をした物件なら、渋る大家さんを「いいお客さんなのでお願いします」と説得しているかもしれません。大事な用事をキャンセルして契約書を作ったスタッフがいるかもしれません。契約書には、大家さんとお客さんの印鑑だけでなく、関わった人や会社の印鑑も押されています。

それを契約の前日に「他にいい物件を見つけちゃったので、キャンセルでお願いします」と言われたら、いい気分のする人はいません。大家さんからすると「そんな優柔不断なお客さんを紹介したのか」となり、紹介した会社の信頼も落ちてしまいます。結婚式の前日に、いきなり婚約破棄をされるのに近いかもしれません。本人たちも大変ですが、まわりへの影響もはかりしれません。

キャンセルでよくあるトラブル

もちろん、本当にしかたのない理由のときもあります。それでも、不動産会社によってはなかなか納得してもらえないこともあります。ネットの掲示板や質問サイトには、次のような声があふれています。

  • 不動産会社にきつい言葉を言われた
  • よくわからない金額を請求されている
  • すでに入金したお金の返金を断られている

請求された金額の理由がわからないときは、何のお金なのか、契約は成立しているのかを、書面やメール(LINEなど文字で残るもの)で確認しておくと安心です。「社内で確認したいので、根拠と内訳を文面で送ってください」とお願いするのが効果的です。

「キャンセルできるから仮押さえ」はNG

不動産会社から「キャンセルできるので、とりあえず仮押さえしておきましょう」とすすめられることもあるようですが、これはNGです。キャンセル前提で申し込みをすすめてくる不動産会社には注意しましょう。急かされたときの考え方は「とりあえず申し込み」はしていい?で書いています。

「仮契約」という言葉の扱いについては、賃貸に仮契約というものはありませんもあわせて読んでみてください。

キャンセルする理由があるなら一刻も早く連絡を

先に書いたように、入居までには、たくさんの人が動いてサポートしています。いくら法律的に問題がないとはいっても、道義的にはあまりいいものではありません。

どうしても申し込みの後にキャンセルする必要が出てきたときは、一刻も早く連絡してください。連絡するときは、次のことを伝えると話が早く進みます。

  • キャンセルしたい物件名と部屋番号
  • キャンセルしたい理由(簡単でかまいません)
  • すでに入金したお金があるか、いくらか

電話では、まず「お手数をおかけして申し訳ないのですが」とお詫びを伝え、感情的にならずに丁寧に切り出しましょう。最初からけんか腰だと、担当者もかたくなになりがちです。返金を断られるなど納得できない対応をされたときに、はじめて文面での説明を求めたり、相談窓口を示したりすれば十分です。

電話で伝えたら、あとでメールなどでも送っておくと、言った・言わないのトラブルを防げます。

まとめ

  • 重要事項説明を受けて契約書にサインする前の申し込みの段階なら、キャンセルできる
  • 申し込みの段階で預けたお金は、全額返してもらうのが原則
  • 契約が成立した後は、契約書に従って精算される
  • キャンセル前提の申し込みはしない。キャンセルするなら一刻も早く連絡する