結論:チラシの「利回り」は多くが表面利回りで、今の家賃が続く前提の単純計算です。当時の例では5.92%でした。

なぜ重要か:家賃の推移を見ると、同じ広さで73,000円の部屋もあり、今の賃料が続くとは限りません。

次にすべきこと:

  • 周辺の同じ広さの賃料推移を調べる
  • 経費を引いた実質利回りで考える

※この記事は大家さん向けの内容です。

投資用物件のチラシに書かれた「利回り」は、そのまま信用しないほうがよい数字です。多くは「表面利回り」で、今の家賃がずっと続き、経費もかからないという前提の単純計算だからです。買う前には、家賃の推移を調べ、経費を引いた「実質利回り」で考えることが大切です。

暮らしっく不動産の門伝が、参考にした投資用物件のチラシを例に、2016年4月当時のデータで説明します。

投資用物件のチラシの利回りは信用ならない

投資用の物件を買おうとすると、必ず書かれているのが「利回り」です。チラシでは、主に表面利回りが使われます。

今回の参考物件は、区分マンションの一室でした。チラシには、物件の写真や地図、間取り図と並んで、価格・表面利回り・年収(年間の家賃収入)が大きく書かれていました。

表面利回りの計算

表面利回りとは、年間の家賃収入を物件価格で割ったものです。参考物件の数字(当時)は次のとおりです。

項目 数字(当時)
物件価格 1,600万円
年間の賃料収入 94.8万円
賃料(月額) 79,000円
表面利回り 5.92%

計算式は、948,000円 ÷ 16,000,000円 = 5.92% です(管理費は含まず、賃料だけで計算しています)。

1,600万円の物件が、年間94.8万円を生み出す。単純に計算すると、そういうことです。しかし、それはあくまで単純計算です。これからも賃料がそのままとは限りません。

表面利回りと実質利回りの違い

利回りには、表面利回りのほかに「実質利回り」という考え方があります。

種類 考え方 注意点
表面利回り 年間の家賃収入 ÷ 物件価格 経費や空室を考えていない。チラシでよく使われる
実質利回り (年間の家賃収入 − 年間の経費)÷ 物件価格(購入時の諸費用を足して考えることもある) 経費を引くぶん、表面利回りより低くなる

経費には、たとえば管理費や修繕積立金、税金、空室の期間の家賃の減りなどが考えられます。何を経費に入れるかは物件や計算する人によって違うので、チラシや資料に書かれた数字が、どこまでを含んでいるのかを確認してください。

賃貸はデータが充実してきている

知らない人も多いのですが、賃貸の募集データはかなり充実してきています。今回の物件についても、賃料の推移を調べることができました。

下の表は、そのとき調べた募集データです(2014年2月〜2016年3月、当時)。年月は「16/03」が2016年3月を表します。広さの単位は㎡、賃料の単位は万円です。

年月 広さ(㎡) 賃料(万円)
16/03 18.36 7.90
16/03 18.36 7.90
16/03 20.06 8.20
16/02 18.36 7.50
16/02 18.36 7.50
16/01 18.36 7.50
16/01 18.36 7.50
15/11 17.41 8.00
15/11 21.70 7.20
15/10 17.41 8.00
15/10 26.23 9.80
15/09 26.23 9.80
15/08 18.36 7.95
15/08 26.23 9.80
15/04 20.06 6.90
15/04 20.06 6.90
15/03 18.36 7.30
15/03 18.36 7.30
15/02 18.36 7.30
15/02 18.36 7.30
14/11 20.06 8.60
14/10 26.23 8.90
14/09 26.23 8.90
14/08 26.23 9.30
14/08 26.23 8.90
14/07 26.23 9.30
14/06 26.23 9.30
14/06 20.06 8.24
14/05 26.23 9.30
14/05 20.06 8.24
14/05 26.23 9.30
14/05 20.06 8.30
14/05 20.06 8.50
14/04 20.06 8.30
14/04 26.23 9.30
14/04 20.06 8.50
14/04 20.06 8.50
14/04 20.06 8.60
14/04 26.23 9.30
14/03 26.23 9.30
14/03 20.06 7.70
14/03 20.06 8.50
14/03 20.06 8.50
14/03 20.06 8.00
14/02 20.06 8.00
14/02 20.06 8.00
14/02 20.06 8.60
14/02 20.06 7.70

データから見えること

参考物件の部屋は18.36㎡です。データベースを見てみると、同じ広さで73,000円の部屋もありました。

  • 同じ18.36㎡の部屋の賃料は、当時のデータで7.30万円〜7.95万円。79,000円は、その中で高いほうです
  • 投資用の区分マンションは、同じ建物や近くにライバル物件が多く、賃料競争が激しくなりやすい傾向があります
  • 2014年からのデータを見ると、79,000円で家賃を設定できるのも、そう長くはなさそうだということが見えてきます

家賃が下がれば、そのぶん年間の家賃収入が減り、利回りも下がります。チラシの5.92%は、今の79,000円がずっと続くことが前提の数字なのです。

売る側のデータは都合のよいことが多い

投資用物件の売買は、その場かぎりの取引です。売る側は、そこまで細かいデータ分析はしてくれません。細かいデータを出してきても、売るのに都合のよいことしか書いていなかったりします。最近、相談を受けていて、こうしたケースが多く見られます。

チラシの数字を見るときは、次の点を自分で確かめてみてください。

  1. 利回りは表面利回りか、実質利回りか
  2. 計算のもとになっている賃料は、今の相場と比べて高すぎないか
  3. 同じ建物や近くの、同じ広さの部屋の賃料はどう動いてきたか
  4. 管理費や修繕積立金など、毎月かかる経費はいくらか

相場をつかむには、地域ごとの家賃の傾向を知っておくのも役に立ちます。家賃相場の記事も参考にしてください。また、入居者からの家賃交渉で賃料が変わることもあります。入居者がどのように交渉するのかは、家賃交渉の記事で紹介しています。

投資用不動産は「事業」として慎重に

投資用の不動産を買うということは、買う人もいち事業者として見られるということです。不動産の事情にそれなりに詳しくないと、ハズレくじを引くこともあります。

高い利回りをうたう不動産の出資商品のリスクについては、「みんなで大家さん」に学ぶ、不動産投資とそのリスクでも取り上げています。

買うときは慎重に、でも大胆に。ふだんからいろいろと調査をしておくことをおすすめします。買ったあとの空室対策については、大家さん向けの空室対策の記事も参考にしてください。