こんにちは暮らしっく編集部です。

熊本の地震から二ヶ月ほどとなります。
全壊の建物、半壊の建物と判定基準の違いや罹災証明書を受け取るのにすごく時間がかかったりしたというニュースを連日見ているような気がします。

現代の基準には適応していなかった熊本のアパート

ネットでニュースを見ていたら次のような記事がありました。

熊本県南阿蘇村の東海大農学部阿蘇キャンパス周辺の学生向けアパートを国土交通省の研究所が調査したところ、倒壊した木造2階建て7棟のうち確認できた5棟すべてで、柱や筋交いの接合部がくぎだけで留められていたことが分かった。金具を使うよう定める現行の国の基準に照らすと不十分で、強度が低かったとみられる。

出典: 毎日新聞
南阿蘇の倒壊アパート5棟 柱接合部に金具なし http://mainichi.jp/articles/20160513/k00/00e/040/213000c

国土交通省国土技術政策総合研究所というところが調査していたようなのでホームページを見てみました。

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出典:国土交通省国土技術政策総合研究所
平成28年(2016年)熊本地震による建築物等被害第二次調査報告(速報)
http://www.nilim.go.jp/lab/bbg/saigai/h28/20160417kumamotokentiku3.pdf

上記のような形で分析がなされています。
筋交いの部分の釘が1から2本で止められていたり、シロアリの被害、コンクリート部分で言えば鉄筋が入っていなかったりと色々と強度不足があったようです。

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資料では"無筋コンクリート基礎"とサラッと書いてますが、現代の建築では基礎のように力がかかるところは上記の写真のように鉄筋を組んで、そこにコンクリートを流し込んで強度を出します。
この鉄筋がない状態でコンクリートを流せば強度が低いのはおわかりいただけるかと思います。
今の建築基準法には適応していません。
このことから考えてもかなり築年数は古いということがわかります。3年や5年といったレベルではありません。

筋交いに関しても2000年代に建築基準法で制定されたものでは金物を使うように書かれています。

イ:径9ミリメートル以上の鉄筋 柱又は横架材を貫通した鉄筋を三角座金を介してナット締めとしたもの又は当 該鉄筋に止め付けた鋼板添え板に柱及び横架材に対して長さ9センチメートルの太め鉄丸くぎ(日本工業規 格A5508(くぎ)─1992のうち太め鉄丸くぎに適合するもの又はこれと同等以上の品質を有するものをい う。以下同じ。)を8本打ち付けたもの

ロ:厚さ1.5センチメートル以上で幅9センチメートル以上の木材 柱及び横架材を欠き込み、柱及び横架材に対 してそれぞれ長さ6.5センチメートルの鉄丸くぎ(日本工業規格A5508(くぎ)─1992のうち鉄丸くぎに適 合するもの又はこれと同等以上の品質を有するものをいう。以下同じ。)を5本平打ちしたもの

ハ:厚さ3センチメートル以上で幅9センチメートル以上の木材 厚さ1.6ミリメートルの鋼板添え板を、筋かいに 対して径12ミリメートルのボルト(日本工業規格B1180(六角ボルト)─1994のうち強度区分4.6に適合 するもの又はこれと同等以上の品質を有するものをいう。以下同じ。)締め及び長さ6.5センチメートルの太 め鉄丸くぎを3本平打ち、柱に対して長さ6.5センチメートルの太め鉄丸くぎを3本平打ち、横架材に対して 長さ6.5センチメートルの太め鉄丸くぎを4本平打ちとしたもの

ニ:厚さ4.5センチメートル以上で幅9センチメートル以上の木材 厚さ2.3ミリメートル以上の鋼板添え板を、筋 かいに対して径12ミリメートルのボルト締め及び長さ50ミリメートル、径4.5ミリメートルのスクリューくぎ 7本の平打ち、柱及び横架材に対してそれぞれ長さ50ミリメートル、径4.5ミリメートルのスクリューくぎ5 本の平打ちとしたもの

ホ:厚さ9センチメートル以上で幅9センチメートル以上の木材 柱又は横架材に径12ミリメートルのボルトを用 いた一面せん断接合としたもの

出典:平成12年建設省告示第1460号とそれに関連した建築基準法等条文より抜粋

釘が5本や7本といった複数の本数が目立ちますね。
建てた当時は熊本のアパートのように釘が1,2本でも良かったのかもしれません。

改築◯◯年

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出典:倒壊したアパートのホームページより(現在は閉鎖)

今回倒壊したアパートのいくつかは改築◯年と書かれていました。
改築で外装の綺麗さや内装は工事でいくらでも新築同様にできます。
見た目の綺麗さに騙されてはいけません!オートロックやセキュリティシステムが入っているから新しいわけではないのです。
そういう工事はお金さえ払えばあとからいくらでもつけられるのです。

築何年かは謄本を調べればわかります

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築何年かは謄本を調べるとわかります。法務局から有料で取り出すことができます。
気になる人は調べてみましょう。

さいごに

外観の綺麗さは目に見えても内部の強度までは建築を知っている人でないとわかりません。
フローリングが綺麗だったり設備が新しかったりというのも直接触れる部分ですのでとても大事ですが、いざという時に人命が守られるのかどうかという内部の部分がとても大切というのを今回の件でいっているような気がします。

改築3年や5年といった表記ではなく、きちんとした築年数の表記だったら入居しなかった人もいるのかと思うとなんともいえない気持ちになります。

それではまた。