こんにちは。暮らしっく不動産の徳留です。

お客様からいただく部屋探しのリクエストを見ていると"RC造(鉄筋コンクリート)またはSRC造(鉄骨鉄筋コンクリート)でお願いします。"というリクエストを見かけるのですが、それは何を期待しているのだろう?と考えてしまいます。
もちろん遮音性を求めているのは十分にわかるのですが、本当にRCやSRCであれば遮音性が高いのでしょうか?
家賃相場に満たないRC造(鉄筋コンクリート)がどのような作りをしているのか考えてみました。

家賃相場より高い賃料のRC物件

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おそらく皆さんが希望されているRC造(鉄筋コンクリート)はこういう作りのものだと思います。
隣の部屋との境にある壁面(界壁と言います)もRC造(鉄筋コンクリート)で作られている物件です。
上下階の音はもちろんのこと隣の部屋の音もしっかり遮音するタイプのお部屋です。

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これはとある大手デベロッパーが建築したマンションの真ん中の部屋。
(先ほどの図でいうところの202号室と考えてください)

施行中の写真ですが、両端の壁面がRC造(鉄筋コンクリート)で作られていることがおわかりいただけるかと思います。

ちなみにこちらのマンションは平均的な相場の1.5倍から2倍ほどするマンションです。
そのエリアの家賃相場の1.5倍から2倍ぐらいの賃料をとるRC造だとかなり素晴らしいつくりになっていることが多いです。
家賃というのは"土地の値段"+"建物の建築費"から算出されるので、相場より安いRC造というのは築年数が古かったり、面積が狭かったり、隣の部屋との界壁がコンクリートでなかったりという可能性が大きいということです。

建築基準法としては?

建築基準法は生命や財産を守るうえで最低限の基準です。
過剰なスペックの基準ではありません。

コンクリートの場合で下地無しで100mm以上であればOK

もしくは石膏ボードを使った施工だと次のようなもの。

次のイ及びロに該当するもの

イ 界壁の厚さ(仕上材料の厚さを含まないものとする。)が10センチメートル以上であり、その内部に厚さが2.5センチメートル以上のグラスウール(かさ比重が0.02以上のものに限る。)又はロックウール(かさ比重が0.04以上のものに限る。)を張つたもの

ロ 界壁の両面を次の(1)又は(2)のいずれかに該当する仕上材料で覆ったもの

(1) 厚さが1.2センチメートル以上の石ボード、厚さが2.5センチメートル以上の岩綿保温板又は厚さが1.8センチメートル以上の木毛セメント板の上に厚さが0.09センチメートル以上の亜鉛めつき鋼板を張つたもの

(2) 厚さが1.2センチメートル以上のせつこうボードを2枚以上張つたもの

参考:昭和45年建設省告示第1827号 平成16年9月29日 国土交通省告示第1170号による改正

http://gioca.sakura.ne.jp/www_basic/kokuji/kaisei/s45_1827.htm

石膏ボードを使った施工方法(上記のイとロの2の方法)だと隣の部屋との距離は148mmになります。
iphone7の高さが138.8mmなので、その程度の厚みがあればOKということです。

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家賃相場より安い賃料のRC物件

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四方を囲む部分は鉄筋コンクリートですが、部屋ごとを区切っているのは石膏ボードです。
道路などの周辺環境の音は遮ることはできますが、隣室からの音は鉄骨造や木造と変わりません。

隣室からの音が気になるからRC造(鉄筋コンクリート)を選んだのに家賃相場より安い物件を選んでしまったためにRC造(鉄筋コンクリート)のメリットが半減してしまうケースです。

そのエリアの家賃相場よりも安い物件だとRC造(鉄筋コンクリート)とはいうものの。。。といったところでしょうか。
例えばですが、家賃相場9万円のエリアで6万円でRC造(鉄筋コンクリート)を探すとこういう物件に当たる確率が非常に高いです。
こういった物件の場合、最低限の基準(建築基準法は守っている)で建設しているので、充分な遮音効果は望めません。分譲系のきちんとしたマンションであればコンクリートだけで180mmを超える物件もありますがこの場合は前述の148mmの可能性が非常に高いです。

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先ほどの高級マンションでは部屋ごとを、しきる壁になっている石膏ボード。
(左の電気スイッチがついている壁のこと)
木枠やアルミフレームに石膏ボードを貼り、その上に壁紙を貼ってあります。

家賃相場よりも安い物件では、このような素材が隣の家との壁に使われていることが非常に多いです。
RC造の中にもピンからキリまでありますが、RC造(鉄筋コンクリート)といえど隣の部屋の深夜のTVの音や、ひどい場合には話し声も聞こえくる場合もあります。

RC造(鉄筋コンクリート)といえど隣の部屋との壁がコンクリートの壁ではないというのがポイントです。
材料費で考えたら圧倒的に石膏ボードのほうが安いのでこういうところで建築費を抑えているのです。

これでは遮音性を求めているのでRC造(鉄筋コンクリート)にした意味がほとんどありません。

RC造でなくとも予算に見合った木造や鉄骨造

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隣の家との壁が構造体なのか石膏ボードのみなのかは不動産屋ではわかりません。
そこまでの壁の厚みのような建築図面の情報というのは不動産屋にはおりてこないからです。
実際、現地に行って壁を叩いてみたり、ベランダに出て隣の家との壁厚から考えるしかありません。

ですが、色々な物件を見ていて思うのは縦長の部屋よりも正方形に近い部屋のほうが遮音性に考慮された設計がなされている傾向があるように思えます。
上記の図はハウスメーカーが建てる鉄骨造や木造によくある設計です。

上記図面の遮音のポイント

  1. 共用廊下を挟むことによって201号室からの音を低減
  2. 202号室と203号室の間に水回りや収納を持ってくることにより居室部分の音を低減

家賃相場に届かないのに無理にRC造(鉄筋コンクリート)にこだわりを持ち続けるよりもこういう時は少しランクの高い鉄骨造や木造に考えをシフトしたほうが結果的には満足度の高い家に住めるような気がします。

遮音性がほぼ期待できない物件

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色々な設計方法があるのですが、遮音がほぼ期待できない例も書いておきます。
先ほど縦長で、家賃相場よりもかなり安い物件は期待できないと書きましたが、その典型例です。

特に木造で上記のような作りをしているような物件は、限られたスペースになるべく沢山の入居者を入れて収益を上げる物件ですので遮音的なものはほぼ期待できないと考えたほうがいいでしょう。
ただしその街の家賃相場から比較するとかなり家賃が安いです。

例:1Rで7万円の家賃相場に対して5万円台の物件など

こういうところは入居者が入りづらいので、頻繁にトイレ新品!ウォシュレット付き!と設備の新しさを強調してくることが多いですが、設備を新しくしてエンドユーザーの興味をひいているだけなので要注意です。

安いものに多くを求めてはいけない

驚くほど値段に正直な家賃とエリアを含めた部屋のスペックです。
家賃が安いから。という理由だけで選んだ物件はあなたの不満を解消してくれる部屋でしょうか。

RC造(鉄筋コンクリート)だからといって遮音性が高いわけではないということをご理解いただければと思います。

それでは!