不動産のルールである宅建建物取引業法で「宅建の免許を持った人がかならず説明しなければならない」と厳しくされている重要事項説明書。
契約書の手続きでは必ず冒頭に行なわれます。
今回は賃貸の重要事項説明書で気をつけたいポイントを分かりやすく解説していきたいと思います。
重要事項説明書
今回、サンプルで使う重要事項説明書はこちら。
国土交通省が出している標準のものになります。
不動産各社いろいろな書式がありますが、基本はこの国土交通省のもの。
今回はこれを基準に話しを進めていきたいと思います。
国土交通省 宅地建物取引業法 法令改正・解釈について
http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000268.html
国土交通省の重要事項説明書 様式 ダウンロード(国土交通省)
重要事項説明書って何?
契約書とどう違うの?という質問をよく受けます。
簡単に説明すると、「契約書を分かりやすく、箇条書きにしたもの」が重要事項説明書です。
契約書のこんな細かい約款(やっかん)が・・・。
このように。
分かりやすくまとめられます。
見やすい契約書で重要なところを確認しましょうね。
というのが、重要事項説明書です。
それでは気をつけたいポイントをあげていきたいと思います。
1. 説明している人はあってる?
この重要事項説明書は、宅建を持っている人でいけないとされています。
この赤で囲ってある部分です。
説明する宅地建物取引士というのが、その当日に重要事項説明書を説明してくれる人です。
そして宅建の免許証も提示することになっています。
免許証はこのようなものです。
運転免許証よりも一回りくらい大きいサイズで、顔写真付き。
不動産は言った言わないでのトラブル、思い違いのトラブルが多いです。
そのようにならないためにもその不動産をきちんと調査して、不動産の国家免許である宅建の資格を持った人の説明が必要とされています。
まずはこの説明してくれる人があっているかどうか、確認をしましょう。
まれに「今日は急に仕事になってしまって・・・」なんていう不動産業者もいますが、それは絶対にNG。
そういう取引はトラブルが多いので注意をしましょう。
2. 物件はあってる?
契約までの物件情報は主に図面です。
図面が正しいと思いがちですが、図面はあくまで図面。 さらに「現況を優先します」なんていう逃げ言葉も入っています。
自分が契約する物件がどのように記載されているのか、ここできちんと確認をしましょう。
100件に1件くらい、ここが間違っていることもあります。(その場合はケアレスミスで、その後修正されますが)
間違っていたりすると、その後契約書は修正で手元に届くのが遅れたりもします。
家賃手当、社宅の扱いがある場合、遅れはマズイです。
きちんと確認をしておきましょう。
貸主についても見ておきましょう。
最近はサブリースという契約も多く、所有者と貸主が違うケースも増えてきています。
だからといって問題があるという訳ではありませんが、住みはじめてからのトラブルなどでの連絡先が異なります。
3. 登記簿の確認はしている?
赤で囲ってある部分、登記簿に記載された事項についてきちんと調べたか確認をしましょう。
細かくいうと、いつ時点での登記記録なのかというのもあります。
売買であればこの辺りきちんと取りますが、賃貸の取引では登記簿謄本の調査を省いていたり、古い登記情報のまま取引したりする不動産業者もいたりします。
登記簿謄本調査で悪い例だとこのようなケース。
このように差押られて、競売が決まっている不動産も世の中にはあったりもします。
不動産の権利は目に見えません。
きれいな不動産なのかきちんと調査することが基本です。
4. 電気、ガス、水道は大丈夫?
電気、ガス、水道(給水と排水)の状況が記載されます。
気をつけるポイントは大きく2つ。
4-1. 都市ガスかプロパンガスか
都市ガスなのか、プロパンガスなのか、ここで分かります。
ガスの違いによっては、コンロやその他のガス器具が使えない場合もあります。
どちらのガスなのか、きちんと確認しましょう。
東京でもプロパンガスのところは意外とあります。
道路から少し入ったところにある建物だったりすると、プロパンガスだったりします。
募集図面の段階で分かるのが普通ですが、まれに調査ミスだったり、その案内した営業の人の勘違いだったりで、ミスがあったりもします。
聞いてないよ、とならないように。
都市ガスなのか、プロパンガスなのか、重要事項説明書でもきちんと見ておきましょう。
4-2. ガス無し
ガスがきてないこともあります。
「お湯が使えない!?」と思う人もいると思いますが、ガスが無くても電気給湯器やセントラルヒーティングで給湯をすることができます。
古いマンションだったり、最近のタワーマンションではこのようなケースもあります。
キッチンはIHとなります。
いわゆるオール電化というものです。
ここも説明不足、調査ミス、勘違いは賃貸で多いです。
契約のあとに後悔しないように、重要事項説明の段階できちんと見ておきましょう。
またガスが無い場合はガスの契約は不要です。
ライフラインの開通手続きのときに注意しましょう。
(ガスがなければガス屋さんから言われると思います)
5. 新築の場合【未完成物件のとき】
建物建築工事完了時における計上、構造等(未完成物件のとき)、とありますがこれは新築の物件を契約するときです。
どのような建物の形状、構造(木造とか鉄骨造とか鉄筋コンクリート造とか)
どのような内装になるとか
設備がどこにくるとか
そのような説明が入っています。
新築でない場合は、ここには何も入りません。
6. 設備の状況は?
契約する物件にある設備について記載されます。
エアコン、キッチン、給湯器、トイレなど、そういうものが設備と言われるものです。
ここに記載されているものを含めての契約です。これは契約書にも同じ記載があります。
エアコンが設備に入っていなくて、前の入居者が残していったもの。 壊れたら自分で買ってね!なんていう物件も稀にあります。
また2LDK、3LDKなどの大きな物件だと、リビング以外のエアコンは付いていても契約として設備に入っていないということもあります。
何を含めての契約なのか、ここで再度確認しておきましょう。
7. どんな土地?
契約する物件の土地がどのような土地か、説明するところがあります。
7-1. 造成宅地防災区域
出典:国土交通省
山を切り開いたり、谷を埋めたりして土地にしたところで、更に防災区域と指定されているところがこれにあたります。
「現在造成宅地防災区域に指定されている地区はありません」と国土交通省が発表しています。
http://www.mlit.go.jp/crd/web/jokyo/jokyo02.htm
7-2. 土砂災害警戒区域
土砂災害が起こる可能性の場合は、左の区域内に◯がつきます。
東京都の土砂災害警戒区域マップ (東京都)
http://www.sabomap.jp/tokyo/
各都道府県が公開している土砂災害危険箇所と土砂災害警戒区域(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/river/sabo/link_dosya_kiken.html
最近だと新宿区でも中落合や下落合などでいくつか地域が指定されました。
http://www.city.shinjuku.lg.jp/kusei/kenchikuc01_002036.html
最近は気候が変ったのか、大雨の被害が増えてきました。
先日の福岡の大雨でも土砂災害警戒区域内で被害がありました。
事前にわかる情報は、少しでも役に立てばと思います。
7-3. 津波災害警戒区域
こんなきれいな海でも、地震が起こって条件が揃うと怖い津波を引き起こします。
2011年の東日本大震災の津波被害のあとに、津波災害に関する法律が施行され、その後すぐに重要事項説明での追加が決定されました。
津波防災地域づくりに関する法律について(国土交通省)
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/point/tsunamibousai.html
津波災害警戒区域等についての宅地建物取引業法に基づく重要事項説明について(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/common/000214959.pdf
現在、津波災害警戒区域で指定されている地域は以下の通りです。
指定済みの県 | 指定日 |
徳島県 | 平成26年3月 |
山口県(瀬戸内海沿岸) | 平成27年3月 |
山口県(日本海沿岸) | 平成28年2月 |
静岡県(東伊豆町、河津町) | 平成28年3月 |
和歌山県(19市町) | 平成28年4月 |
長崎県 | 平成29年3月 |
京都府 | 平成29年3 |
出典:国土交通省 「津波浸水想定の設定、津波災害区域の指定及び推進計画の作成状況」より(平成29年7月16日現在)
東京はまだ指定されている地域はありませんが、海抜の低いエリアなどは今後津波災害警戒区域として指定される可能性があります。
今後、注意して見ていきたい部分です。
8. アスベストと耐震について
8-1. 石綿使用調査の内容
難しい漢字が並びますが、これは「アスベスト」ことです。
出典:国土交通省 建築物のアスベスト対策
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha08/07/070425_2/01.pdf
アスベストについての詳しい説明はこの国土交通省の説明が分かりやすいと思いますのでそちらにて。
今ではアスベストを使うのは禁止になっていて、マキベスという耐火被覆材を使うことになっています。
昔の建物でアスベストが使われていただろう年代のものが対象になります。
(昭和31年から平成1年までに施工された民間の建築物、で概ね1,000m²以上の建物)
しかしこれは調査義務はなく、調査したのかどうなのか、を書くことになります。
ただ賃貸では住んでいる人が天井ぶち抜いてリフォームすることもないと思うので。あまり関係はないかと思います。
問題となるのは、買う時です。
アスベストを使っていると解体費用が少し高くなります。
賃貸の場合、多くは「調査無し」が多いです。
8-2. 耐震診断について
耐震診断があったのか、ここに記載されます。
不動産では、1981年6月1日以前に許可がおりた旧耐震基準と呼ばれる建物の耐震診断がされたかどうか、ここが注目ポイントになっています。
耐震診断を受けたものは有り、とその診断内容の書類が添付されたりします。
一棟が個人オーナーの旧耐震物件は耐震診断を行なっていないことが多いです。
新耐震と旧耐震の違いについては、こちらの過去の記事を。
旧耐震と新耐震 建物の違いを知りましょう(暮らしっく不動産)
https://www.kurachic.jp/column/1184/
9. 契約金についてのこと
賃借以外に授受される金額。
これは家賃以外に契約のときに払うお金のことです。
主にはこのようなものです。
- 敷金
- 礼金
- 仲介手数料
- 保険料
- 初回保証料(保証会社の費用)
- 鍵交換費用
自分で支払った契約と間違いがないか確認をしましょう。
「礼金払っているのに、礼金の項目がない!?」という話もまれに聞きます。
しっかりと確認をしましょう。
10. 違約金のこと
違約金の設定がある場合、ここに書かれます。
一般的な条件の契約だと、違約金は無いことがほとんどです。
礼金ゼロの物件、敷金も無いゼロゼロ物件、フリーレントが付いている物件など。
オトクな物件には違約金が付いていることが多いので要注意です。
オトクな物件の違約金としてよくあるものはこのような設定です。
乙の都合により本契約を1年以内の解約の場合は賃料の1ヶ月分、2年以内の場合は半月分の違約金を、乙は甲に支払うものとする。
礼金ゼロ、フリーレント1ヶ月などの条件で募集する場合によく使う設定です。
「礼金ゼロだから、2年くらいは住んでほしい、すぐ出る場合は礼金ゼロは無かったことに」という設定です。
礼金ゼロ、フリーレントなどありますが、このように違約金設定で出口が塞がれている場合もあります。
通常の条件での募集は、違約金のところは空白が多いです。
11. 契約期間と更新と更新料
ここには契約の開始日と終わりの日。
契約の年数。
契約の種類などが入ります。
賃貸で居住用の場合、ほとんどが2年間です。
契約の種類。
これは普通の契約であれば、一般借家契約だとか普通賃貸借契約ということになります。
期限が決まっている契約であれば定期借家となります。
更新に関する事項は、更新の説明。
更新料なども記載されます。
最近、更新料の他に「更新事務手数料」を取る不動産屋が増えています。
これは募集図面に記載が無いのにいきなり契約書、重要事項説明書で有りにするパターンは禁止されています。
(東京都の賃貸ホットラインでも問題になっていると友だちの業者が教えてくれました)
ここれいきなり「更新事務手数料」が登場したら一言注文をつけると良いかと思います。
12. 部屋の使い方について
部屋をどのように使うかの決まりがここに書かれます。
住居として借りる場合は、「住居としての利用」。
事務所だったりすると「事務所としての利用」と書かれます。
その下の利用の制限は、ペットや楽器のことです。
ペットが飼える場合は「ペットの飼育可」。
逆に飼えない場合は「ペットの飼育不可」となります。
楽器も同じくです。
ペットに関しては意外と問題が多くて、仲介会社やその時の担当の口約束で契約までしてしまっている人がときどきいます。
このブログでは何度も注意していますが、不動産で口約束は絶対ダメです!
ペットを飼える物件を探している人は、この重要事項説明書の利用制限で「ペットの飼育可」が入っているのか、必ず確認をしましょう。
「ペット飼えるということで契約したんですけど、大家さんから注意されて・・・」という相談は意外とあります。
この項目はきちんと確認をしましょう。
13. 管理のこと
契約する物件の管理会社のことがここに記載されます。
マンションだったりすると、専有部と共有部で管理会社が分かれることもあります。
これはとあるマンションですが、共有部分は長谷工さんの管理。
専有部分(部屋の中のこと)はうちが管理しています。という表示。
さいごに
ポイントと思いましたが、ほとんど全ての解説になってしました。
でもそれくらい重要事項説明書は大切だということです。
契約書の説明でも書きましたが、不動産って思っているよりもトラブルは多いです。
一番多い「退去時の精算」も実は部屋選びと、この重要事項説明書の勘違いから起こっていることが多いです。
部屋だけでなく、契約内容と条件もしっかりみて選ぶことをおすすめしたいと思います。
それでは今日はこのあたりで。