弁護士・不動産鑑定士の安藤晃一郎です。

今回は、世間を騒がせているサブリース問題についてご説明させていただきます。

収益用不動産のサブリースについては、家賃保証に関して多数の裁判が提起され、様々な媒体がサブリースの問題を取り上げていますので、多くの方がご存知かと思います。

そして、2017年秋頃よりメディアがこぞって取り上げたのが、株式会社スマートデイズが運営する「かぼちゃの馬車」の問題です。

シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営しているスマートデイズは、建物所有者に対してサブリース契約に基づいて家賃保証を行っていましたが、スマートデイズは、建物所有者に対し「これ以上は家賃を払うことができない」という告知を行ったため、問題となりました。

サブリースの落とし穴や仕組みについては、以前のコラムでご確認ください(参照:https://www.kurachic.jp/column/701/ )。

このコラムにあるとおり、不動産に関して正確な知識があれば現在問題となっているようなサブリースはお薦めすることができないことは明らかです。
なぜなら、サブリースのほとんどが適切に利益を上げることができるビジネスではないからです。

このようなサブリース会社の宣伝文句として「相続対策になります」「30年家賃保証なので老後の資金になりますよ」「投資として不動産ほど安心なものはありません」など話がなされることがあり、これらの宣伝も一面では正しいのですが、大半が適切に利益を上げられる仕組みになっていません。

いい加減なマーケティングも。3つの問題点

その主な理由としましては、以下の通りです。

1 建設費が異常に高い

このようなサブリース契約では、サブリース会社が建物の建築も請け負います。一般的なサブリースではすでに建築されている建物を対象としますが、近年問題となっているサブリースは建物の建築からサブリース会社が関与することが特徴的です。

この場合に、分かりやすくご説明しますと、工務店に支払う建設費が5000万円だとすると、サブリース会社は大家さんに2500万円を上乗せした7500万円を請求します。

本来は5000万円で建物を建築することができたのに、2500万円も上乗せされているので、借入金も多くなり、月々の返済金額も高額になります。

ここまで極端なものではなくてもこのようなサブリース事業では建設費が高額というケースが多いです。サブリース会社ないしはサブリース会社と協力関係にある建設会社が大幅に中抜きをして利益を得ている場合がほとんどです。

2 家賃設定やマーケティングがいい加減 

収益物件でその運用の成否を左右する大きな要素として駅距離などの利便性が高いことが挙げられますが、このようなサブリース物件では、駅から離れているなど利便性が低い場所が対象になることが多いです。

大学や企業の周辺であれば駅距離などに難点があっても一定程度の需要は見込めるので空室率は低くなりますが、このような特殊事情がなければ空室率は高くなります。

そして家賃設定も相場と比較すると割高で、近辺のより利便性が高い部屋の家賃とさほど変わらない家賃設定のため、入居者は少なくなり、空室率は高くなります。サブリース会社もサブリースの利用者もこのような弱点があることは重々承知しています。そこで登場するのが次の家賃保証です。

3 30年家賃保証はほぼ不可能

このように家賃設定やマーケティングが不適当であることはサブリース利用者も勘付いているにもかかわらずこのようなサブリースを利用するのは、サブリース会社が家賃保証をすることを宣伝しているからと考えられます。

しかし、サブリースの契約書には、「〇年毎に家賃の見直しを行います」という文言が記載されていることが大半です。そして、実際にも、定期的に「家賃の見直し=家賃減額」を行うことが多く、これがサブリース契約を巡るトラブルを数多く起こしているのは周知のとおりです。

家賃保証については、仮に、サブリース契約書に家賃の見直しを認める条項がなくても、サブリース会社は、借地借家法に基づいて家賃の減額請求を行うことができますので、家賃保証は法律的にも拘束力がないものになっております。

簡単に3つを列挙させていただきましたが、これだけでも落ち着いて考えればサブリースがどれだけ危険なものかお分かりいただけると思います。

では、実際にサブリースの契約をしてしまった場合はどうしたらいいのでしょう。

サブリース契約後にできること

1 得られている家賃収入で返済ができている場合

現状のまま返済を続けていくと同時に、借り入れをしている金融機関に利率の見直しや返済期間の延長を申し出てみてください。

今は問題がなくてもいずれ空室率が高まり返済が苦しくなることが想定されます。

空室率が高くなると、おのずとサブリース会社から得られる家賃収入は減ってきます。家賃収入が減ってから慌てるのではなく、順調な今のうちからできることを行っておくべきだと思います。

2 得られている家賃収入で返済ができない状態の場合

このような場合にはすぐに弁護士に相談されることをお薦めいたします。

弁護士に返済すべき月々の金額や借り入れしている合計金額、サブリース契約の内容、総資産など全てを話し、今後の対応を検討すべきです。

3 二次被害には十分に気を付ける

かぼちゃの馬車のように多数の消費者被害がでることが予想される場合は、必ずと言っていいほど「かぼちゃの馬車被害者救済センター」「スマートデイズ被害者救済相談所」といった怪しげなサイトが広告を出してきます。

そういったサイトは必ずと言っていいほど被害者の方を騙し、財産を搾り取ろうとする団体なので問合せをする際は十分に注意してください。

サブリースは収益を上げるための事業であり、事業用の契約であるため消費者保護法の適用は難しいとされています。また、家賃の減額を求めることができる借地借家法は強行法規ですのでこれに反する特約は設けることができません。

サブリースを薦める不動産会社はこのあたりの法律関係を調べたうえでサブリースを行っているため、すでに締結しているサブリース契約を覆すことは困難を極めます。

他方、実際に金融機関から融資を受けているのはサブリースの利用者で、サブリース会社と金融機関は当然ですが別の事業者ですので、サブリース会社からの家賃の支払いが止まっても金融機関への返済は行う必要があります。

サブリース会社に対して裁判を起こし、サブリース契約について争ったとしても裁判は長期化する可能性もありますし、サブリース会社が破産するなどの措置を取った場合は、金融機関から借り入れを行っているサブリース利用者にのみ負債が残ることになります。

スマートデイズを例にとれば家賃の支払いが滞っているスマートデイズに賃料の支払いを求めても意味がないことは明らかです。

以上のとおりサブリース契約についてはその内容をきちんと検討しなければ極めてリスクが高いことがお分かりいただけるかと思います。そして、スマートデイズのご利用者の方につきましては、スマートデイズに対して何らかの請求をすることは難しいと思われます。現在得られている家賃収入で返済ができなくなった方は弁護士に相談してください。借金は解決する手段はあります。くれぐれも弁護士以外に相談に行き、二次被害、三次被害に合わないように注意をお願いいたします。