こんにちは司法書士の尾形です。

久方ぶりの投稿になってしまいました。
あらためて確認してみたところ、最後の投稿から1年以上が経っているのですね―

びっくりしました。
歳を取るはずです。

ただし、その間、なにも遊んでいたわけではないんです。
ちょっとした宣伝になってしまいますが、自身のHP作成に四苦八苦していたわけです。

興味がある方はこちらも合わせてご覧ください。

「司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/

今後は「暮らしっく不動産」の方にも、ちょくちょく記事を投稿させていただければと思っております。

あらためまして宜しくお付き合いください。

基本的には『新住所』にしておくのが無難

居住用の不動産を購入された経験がある方は、住宅ローン先の銀行や不動産仲介業者から「新住所に移しておいてくださいね。」と、指示されたことがあるのではないでしょうか?

あるいはそれに対し、「なんでこのタイミングで?」と、思われた方もいらっしゃるかもしれません。

ただし、それにはちゃんとした理由があったのです。

理由①.後の住所変更登記の手間を避けるため

新住所に移した後でなければ登記を受けられないわけではありません。
もちろん旧住所登記も可能です。

そうでないと、例えば投資用の場合などにもいちいち住所変更をする羽目になってしまいます―

ただし、購入する不動産が居住用であれば、遅かれ早かれ対象の不動産に引っ越し、住所の変更も行うことでしょう。

結果、新住所で登記をしていないと、後に改めて住所変更登記が必要となってしまうのです。

例えば、購入不動産を売却する際や住宅ローンの借り換えを行う際などに、その時点の住所(印鑑証明書上の住所)と登記されている住所に相違がある場合は、その前提として「住所変更登記」を行わなければなりません。

法務局に足を運ぶなどして、自分でその手続を行う事も可能でしょうが、少なからず手間がかかります。
我々司法書士に変更の登記を依頼することもできますが、さすがに無償というわけにはいきません。

であれば、予めその手間を避けようという趣旨なのです。

理由②.住宅用家屋証明書を簡易に取得するため

「住宅用家屋証明書」という書類があります。

端的言うと、一定の要件を満たす住宅に対して、登録免許税の軽減措置を受けることのできる書類なのです。

分かりにくいかもしれませんが、これ、捨て置けませんよ。
取得することによって諸経費がかなりお安く済みますから―

ちなみに中古不動産だけではく、新築不動産の取得時、住宅ローンを借りる際にも使えます。

では、どのくらい安くなるかというと―

・住宅用家屋証明書を取得する場合とそうでない場合の比較

不動産を購入し、その名義変更をする際、法務局に対し登録免許税というものを納める必要があります。
また、住宅ローンを借りた際には銀行から「抵当権」というものを購入不動産に設定されるのですが、それについても同様に登録免許税がかかります。

この際、住宅用家屋証明書の適用があればその税率が大きく変わるのです。

<各種税率>

住宅用家屋証明書の適用なし 住宅用家屋証明書の適用あり
(移転) 固定資産税評価額の2% 固定資産税評価額の0.3%
(抵当権)設定金額の0.4% 設定金額の0.1%

仮に購入対象の建物や住宅ローンが次のような内容だったとするとその登録免許税は―

建物の固定資産税評価額 住宅ローン設定
500万円 3,000万円

<登録免許税> 

住宅用家屋証明書の適用なし 住宅用家屋証明書の適用あり
10万円(500万円2%) 1万5,000円(500万円0.3%)
12万円(3,000万円0.4%) 3万円(3,000万円0.4%)
合計 22万円 合計 4万5,000円

その差額は実に17万5,000円にも及びます。
適用が可能な案件なのであれば、是が非でも取得しておきたいものです。

・住宅用家屋証明書と住所の関係性

では、この住宅用家屋証明書に「住所」がどのように関わってくるのかと言うと―

取得時の必要書類が変わってくるのです。
市区町村によって多少の違いはありますが、一般的には住宅用家屋証明書取得時には次のような書類が必要となってきます。

<住宅用家屋証明書を取得するのに必要な書類>

新住所登記を行う場合 旧住所登記を行う場合
売買契約書 売買契約書
建物の登記簿 建物の登記簿
住民票 住民票
上申書(申立書)
疎明資料

居住用であることが大前提ですので、住宅用家屋証明書取得時に新住所移に移っていることが当然であり、旧住所での取得はあくまで例外扱いとなります。

そのため、旧住所で住宅用家屋証明書を取得する際には必要書類が増えるわけです。
具体的にはなぜ新住所に移せないのかを疎明資料等を添えて申し出るわけです。

しかも面倒なことに、この「住宅用家屋証明書」、登記申請時点で法務局へ提出する必要があります。

追って提出していいものではないのです。
後々、登録免許税の還付を受けられたりもしません。

結果、冒頭のとおり「新住所に移しておいてくださいね。」ということを、住宅ローン先の銀行や不動産仲介業者から指示されることがあるわけです。

単に皆さんの手間や不利益を防ごうとする声がけだったわけですね。

それでは今回はこの辺で―