こんにちは暮らしっく不動産の門傳です。

最近はまた不動産業界の悪事がニュースになっています。

「フラット35」の不正利用、住宅機構が全件調査へ 防止策に限界も(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44781180U9A510C1EE9000/

フラット35、公的な住宅ローンの不正融資問題です。

不正調査は少しづつ始まっていたようで、不正して返済に困った物件が競売にいくつか出ているとの情報がありました。


不正融資は結構あるんですね。
この方の調べでは、フラット35で3件、金融機関の住宅ローンで4件。
また不正融資ではなく破綻してしまったケースが10件。

不動産投資はきちんとやれば失敗の確率は低いですが、やっぱりハズレを引いてしまうと失敗します。

今回は、フラット35の不正融資の一つを詳しく追ってみました。

フラット35の不正ではじめる不動産投資

東京都内の物件。 
物件としては築年数が浅く、入居者付には困らないであろう物件でした。

購入額は、3,900万円 (おそらく2重契約書で諸費用込み)
フラット35 金利1.2%

という物件。

「独立行政法人住宅金融支援機構から、預かっている書類には、サブリースの書類はなく、またその記録もありません」

競売資料より

はじめからフラット35(住宅ローン)を不正利用してた悪質なサブリースのスキームということですね。

このような始まりだったのではないかと予測します。

フラット35とアパートローンの比較

先日、週プレさんの特集でも取材があったのですが、「フラット35を不正利用する理由ってなんなんですか?」という質問がありました。

フラット35や住宅ローンを不動産投資に不正利用する理由としては「金利が安く、その分得をする」という理由が一番です。 
※アパートローンはその事業内容や建て方、手持ち金、金融機関さんとのお付き合いなどによって、金利は様々なので、平均値は難しいのですが、ここでは2%としておきます。

フラット35 アパートローン 差額
金利 1.2% 2% -0.8%

その差は、0.8%。
たったの0.8%か!と思う人も多いと思いますが、金利の0.8%はかなり大きいです。

具体的な数字で、フラット35とアパートローンの違いをみていきましょう。

フラット35 アパートローン 差額
金利 1.2% 2% -0.8%
返済総額 47,237,171 54,260,626 -7,023,455
月返済額 112,470 129,192 -16,722

返済総額では700万円。
毎月の返済では、1.6万円。 1年でみると19.2万円もお得なローンということになります。

またフラット35では、審査が少し優しい。
家を購入するのを支援する国の事業ですから、審査が少し優しいのです。
それを悪用した、というのが今回のスキームです。

では今回のフラット35の返済表を見ていきましょう。

回数 年/月 返済総額 元金分 利息分 借入残高
420 2043/10 47,237,171 39,000,000 8,237,171 0
   
回目 年/月 返済額 元金分 利息分 借入残高
1 2008/11 112,470 75,745 36,725 38,924,255
2 2008/12 112,470 75,817 36,653 38,848,438
3 2009/01 112,470 75,888 36,582 38,772,550
4 2009/02 112,470 75,960 36,510 38,696,590
5 2009/03 112,470 76,031 36,439 38,620,559
6 2009/04 112,470 76,103 36,367 38,544,456
7 2009/05 112,470 76,174 36,296 38,468,282
8 2009/06 112,470 76,246 36,224 38,392,036
9 2009/07 112,470 76,318 36,152 38,315,718
10 2009/08 112,470 76,390 36,080 38,239,328

と、こんな感じで返済が進んでいきます。

毎月の返済額は11.2万円ほど。
競売資料を見ると、収入として15万円とありますので、単純計算では、約3.8万円の黒字。

しかし不動産投資の場合、経費はこれだけではありません。
もう少し詳しく経費の内訳を見ていきましょう。

毎月の収支(予想)
※固定資産税と都市計画税は75,000円くらいと予想しての月額計算。 この他に不動産管理料もあるかもしれませんが、不算入としています。

家賃(売上) 150,000
管理費(支出) -9,600
修繕積立金(支出) -2,880
借入金返済額(支出) -112,470
固定資産税等(支出) -6,000
合計 19,050

毎月19,050円の黒字ということになりました。
ただこれは空室控除や途中でかかるリフォーム費用等は入れていないので、ほぼ赤字。 いわゆるハズレです。
ちなみに購入金額がもっと安ければ別です。

普通に不動産投資だけで考えると物件となりますが、所得が多い方で節税目的なんていうことで、こういうものを購入したりする人もいらっしゃいます。(本末転倒だとは思うのですが)
今回もおそらくそのようなケースだったのではないかと予測します。
毎月2万円のために、その背負うリスクは大きすぎます。

そして月日が経ち、不正がバレてしまったようです。

10年で不正がバレる

不動産の登記簿謄本を見てみましたが、2018年12月に不正による処罰「差し押さえ」という記録が見つかりました。
やはり不正はいつかはバレます。

回数 年月 返済総額 元金分 利息分 借入残高
122 2018/12 112,470 84,882 27,588 29,212,189

この時点での借入金の残高は、約2,900万円。
フラット35の不正利用ということで、一括返済を迫られ、無理で競売とでもなったのでしょうか。

約10年でこの不動産投資は終わってしまいました。

不正をして儲かったのか?

232万4,100円。 これが10年間での利益となります。
1年あたりでは、22万8,600円。
その他税金もかかるので、手元に残るお金は少ないかもしれません。 また節税スキームで、お金には換算できない良い効果があったのかもしれません。

しかし不正がバレて差し押さえとなったという事実は残念ならが、かなりの大きなダメージとして残ってしまいます。
競売の資料を見る限りでは、おそらく不動産業者に騙されたのかと思います。

10年で232万円は儲かりましたが、その代償はとても大きなものになってしました。

住宅機構はどうやって全件調査をするのか?

「フラット35」の不正利用、住宅機構が全件調査へ 防止策に限界も(日経新聞)

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44781180U9A510C1EE9000/

さて、日経新聞の報道では全件を調査するとのこと。
フラット35は2017年度末で約68万件、15兆円の残高がある。」とのことでかなりの数です。
68万件を全調査するのは大変な作業だと思います。
また日本の不動産流通は情報があまり整っていないので、成約データはほとんど残らないのが現状です。

ただアットホームが業者用に提供している「履歴情報」というものを使えば、その形跡が辿れるのではないのでしょうか。

この物件はうちの物件の募集履歴。

募集した年月日、広さ、賃料、階数、部屋番号(部屋番号はない場合も)などがデータとして拾えます。

こういうツールがあれば少しは作業が進むのかなとも思います。
住宅機構さんには頑張っていただきたいですね。

さいごに

競売の資料ではこのような記録も。

「〇〇とは連絡が取れず、当社では分かりません。」
「前所有者○△については、登記記録の住所地の法人登記はなく、似たような会社として、電話登録があったが、電話が通じない。」
「独立行政法人住宅金融支援機構から、預かっている書類には、サブリースの書類はなく、またその記録もありません」

競売資料より

簡単に要約すると。

不動産業者は売り逃げした。
サブリースを組んで、はじめから住宅ローンを悪用した。

ということです。

今回のような悪質なサブリースと組まれたものは、今後の調査でどんどん出てくるんでしょうか。
昔から「これオカシイナよな」と思っていたことが、ようやく表に出てきたなという感じです。

天知る、地知る、我知る、人知るという中国の古いことわざがあります。


だれも知らないだろうと思っていても、天地の神々は知っているし、私も君も知っている。
悪事は必ずあらわれるものである。隠し事はいつかは露見するものだ。

〔「後漢書楊震伝」より。楊震が王密のさし出すわいろを断った時の言葉〕


それでは今日はこのあたりで。