弁護士・不動産鑑定士の安藤です。
今回は、トラブルが多い共有不動産の管理と処分についてまとめてみました。

1 共有不動産の管理

不動産の中には,複数の方が同じ土地や建物の所有権(共有持分権)を有している、共有不動産が数多くあります。
例えば、不動産を、夫婦でそれぞれお金を出し合って購入した場合や、親が所有していた不動産を相続によって子である兄弟が取得する場合などです。
共有不動産は,共有者間の関係が円満な場合は良いですが、様々な事情によって関係がこじれた場合や、共有者の1人がその土地を売却したくなった場合など、不動産の管理ないしは処分の方針が食い違ったりしてしまうと、スムーズに管理や処分ができませんので極めて困難な状況になります。
そして、共有不動産の管理に当たっては、共有者の協力が必要となります。具体的には共有不動産の管理は次のように行う必要があるとされています。

  1. 共有物の変更(変更行為)
    具体的には、共有物の売却など
    →共有者全員の同意が必要
  2. 変更を伴わない利用・改良(管理行為)
    具体的には、共有物の利用権(使用借権、賃借権など)を設定する行為(判例)やすでに設定されている利用権設定契約を解除する行為(判例)
    →共有持分権の価格に従い過半数の同意が必要
  3. 保存行為  
    具体的には、共有物を物理的な滅失・損傷から守る行為(共有物の修理等)や共有者全員の利益になる行為(不法占拠者への明渡請求等)
    →各共有持分権者が単独でできる

このように、保存行為は共有持分に関係なく共有持分権者が単独で実行できますが、管理行為や変更行為は、単独では実行ができず、他の共有持分権者の協力が必要になる可能性が高くなります。
この点に関連しまして、管理行為は共有持分権の価格に従い「過半数」の同意が必要とされていますので、共有持分比が50:50の場合(例えば、共有者が2人で、その割合が等しい場合)には、50%では過半数に足りませんので、他の共有持分権者の同意がなければ管理行為を行うことができなくなってしまいます。
仮に何らかの事情で第三者と共有関係になる場合でも50:50の持分割合にすることは避けましょう。

2 共有物の処分と共有物分割請求

このように不動産が共有関係になっている場合、共有者間で共有不動産に関する何らかの方針が相違したときには、不動産の管理が困難になりますので、協議によって反対している共有者の持分を売却などの対応をする必要が生じます。
方針が対立している共有者との間で、共有持分の売却交渉ができる場合は良いですが、一部の共有者はいかなる交渉も拒否する場合があります。また、交渉しても売買代金で合意できない場合があります。
このような場合には、裁判所に対して「共有物分割請求訴訟」を提起することにより解決を図ることができます(民法258条)。
共有物分割請求訴訟では、共有物の処分に関して、裁判所が介在し、裁判手続の中で、共有者間で話し合いを行うことになりますが、話し合いでまとまらない場合には判決となり、必ず何らかの結論が示されます。
共有物分割請求訴訟では、共有不動産に関して、何らかの判断が示されることになり、共有不動産を実際に分割する「現物分割」のほか、共有不動産を分割するのが不適当な場合は「競売手続」に付されるという判断が下されることが多いです。
その他、一定の要件を満たしている場合には、売却に反対する共有者の持ち分を特定の共有者が買い取る全面的価格賠償という判決が下されることがあります(判決による具体的な分割の方法は下記のとおりです)。
このように、共有物分割訴訟では、共有不動産を巡って何らかの判断が示されることになります。共有不動産の処分を巡ってトラブルを抱えている方は弁護士に依頼して共有物分割訴訟を検討することが望ましいでしょう。

民法の規定による共有物の分割方法

  1. 土地を共有持分に従って分ける「現物分割」(原則)
  2. 現物分割ができないときには「競売手続による売却」

民法上は、現物分割と競売手続による売却が規定されていますが、裁判では次の方法も認められています。

  1. 共有不動産が複数ある場合に、各不動産を共有者各自が単独で取得する「一括分割」
  2. 共有者の一部を共有関係から離脱させる「一部分割」(離脱したものは持分権相当の土地を単独で取得する)
  3. 共有者の1人又は数人に現物を取得させ、他の者に対する持分権の対価の支払を命じる「全面的価格賠償」
    ※ただし、全面的価格賠償は、買い取る持分権の価格の評価が適正に行われてい ること、及び、支払を命じられる者に十分な支払能力があることが必要とされています

3 不動産鑑定に基づく不動産の価格の分析が必要不可欠です

共有物分割請求訴訟では、裁判の中で、不動産の共有持分を他方当事者に売却したり、共有不動産全体を第三者に売却することがありますが、このときには、その持分の価格がいくらか正確に算定する必要があります。
また、判決になれば、土地を分割する(現物分割)のではなく、共有不動産が競売手続に付されることがありますが(競売手続による売却)、競売になった場合にはいくらで落札されるか検討した上で、持分の売却交渉に臨む必要があります。
このように共有物分割請求訴訟では、不動産価格を予想して対応する必要性が高いですので不動産鑑定の知見も必要不可欠といえます。

4 まとめ

以上のように、共有不動産は管理や処分が煩雑ですが、共有物分割請求を活用すれば何らかの解決を導くことはできますので、お困りの方は共有物分割請求の活用をご検討ください。
以上