結論:敷金礼金ゼロだから怪しい、とは限りません。注意したいのは、短期解約の違約金、退去時のクリーニング費、相場より高い家賃です。
なぜ重要か:入口が安くても、備考の費用や退去費用で合計が高くなる例を実際に見ています。
次にすべきこと:
- 図面の備考と契約書の特約を読む
- 家賃を近くの似た部屋と比べる
目次
敷金礼金なしの物件は怪しい?
「敷金礼金ゼロの物件って、なにか裏があるの?」という質問をよく受けます。
答えは、敷金礼金ゼロというだけで怪しい物件とは限りません。空室を早く埋めたい、立地や設備で他の物件にかなわないので費用で選んでもらいたい、という理由でゼロにしている物件も多いからです。
ただし、入口の費用を安くした分を、別のところで取り戻そうとする物件もあります。よくあるのは次の4つです。
- 短期解約の違約金:「1年未満で解約したら○万円」などの特約がある
- 退去時の費用:ハウスクリーニング代が高い、よくわからない退去費用を請求される
- 家賃が相場より高い:毎月の家賃で初期費用の分を埋めている
- 備考欄の上乗せ費用:消毒代など、余計な初期費用が書かれている
この4つを確かめて問題がなければ、敷金礼金ゼロでもよい物件です。順番に見ていきましょう。
なお、2022年時点の傾向として「礼金なし(敷金はあり)」の物件が増えていました。敷金あり・礼金なしの物件は、特に怖がらずに選んでよいものが多いです。
敷金礼金ゼロのメリット・デメリット
メリットは、初期費用が安くなることです。敷金・礼金がそれぞれ家賃1ヶ月分なら、2ヶ月分が浮きます。
デメリットは次のとおりです。
- 数が少ないので、選択肢が少なくなる
- 退去時の費用が高くなりそうな物件が混ざっていて、見分けが難しい
- 人気の物件は早く決まるため、残っている部屋を見に行っても条件が合わないことがある
「どうしても初期費用が出せない」「急いで引越ししなければならない」という人には助かる物件です。それ以外の人は、敷金礼金ゼロだけを条件にして探すより、合計の費用で比べるのがおすすめです。初期費用の考え方は「初期費用」の記事にまとめています。
敷金礼金ゼロの物件はどのくらいある?
東京23区では約9%(2013〜2014年)
2013年10月から2014年9月までの東京23区の募集データを暮らしっく不動産でまとめたところ、敷金礼金ゼロの物件は9.02%でした(アットホーム、東日本不動産流通機構レインズのデータより)。
| 順位 | 区 | 募集された物件数 | 敷金礼金ゼロの割合 |
|---|---|---|---|
| 1 | 足立区 | 29,146戸 | 15.88% |
| 2 | 板橋区 | 32,749戸 | 15.75% |
| 3 | 江戸川区 | 35,513戸 | 14.19% |
| 4 | 葛飾区 | 17,049戸 | 13.75% |
| 5 | 北区 | 23,421戸 | 11.68% |
| 6 | 豊島区 | 30,144戸 | 11.23% |
| 11 | 新宿区 | 43,193戸 | 8.85% |
| 19 | 港区 | 33,144戸 | 5.83% |
| 20 | 渋谷区 | 32,197戸 | 5.43% |
| 21 | 品川区 | 33,902戸 | 4.98% |
| 22 | 中央区 | 22,509戸 | 4.87% |
| 23 | 目黒区 | 27,405戸 | 4.56% |
(2013年10月〜2014年9月。上位6区、新宿区、下位5区を抜き出して掲載)
当時は10件に1件あるかないか、という数字でした。
コロナ禍の2021年は、22の区で増加
2021年3月に同じように調べたところ、敷金礼金ゼロの物件は大きく増えていました(暮らしっく不動産調べ。業者用の物件情報サイトとレインズより集計)。
| 区 | 2021年3月5日時点 | 2020年1〜3月平均 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 足立区 | 29.71% | 25.82% | +3.89 |
| 千代田区 | 26.03% | 3.76% | +22.27 |
| 葛飾区 | 22.06% | 21.07% | +0.99 |
| 板橋区 | 20.98% | 18.56% | +2.42 |
| 練馬区 | 17.97% | 15.59% | +2.38 |
| 杉並区 | 17.70% | 10.78% | +6.92 |
| 墨田区 | 17.40% | 7.85% | +9.55 |
| 江戸川区 | 16.53% | 13.84% | +2.69 |
| 北区 | 15.24% | 11.26% | +3.98 |
| 豊島区 | 14.44% | 12.42% | +2.02 |
| 中野区 | 14.19% | 12.37% | +1.82 |
| 江東区 | 14.00% | 9.06% | +4.94 |
| 台東区 | 13.97% | 8.98% | +4.99 |
| 荒川区 | 13.76% | 11.28% | +2.48 |
| 大田区 | 12.66% | 8.34% | +4.32 |
| 新宿区 | 11.20% | 9.49% | +1.71 |
| 中央区 | 10.08% | 5.90% | +4.18 |
| 品川区 | 10.07% | 5.56% | +4.51 |
| 世田谷区 | 9.22% | 7.32% | +1.90 |
| 渋谷区 | 8.40% | 5.90% | +2.50 |
| 港区 | 8.22% | 2.20% | +6.02 |
| 目黒区 | 6.62% | 6.64% | -0.02 |
| 文京区 | 6.57% | 5.87% | +0.70 |
(増減はポイント。割合の高い順)
23区のうち22の区で増え、減ったのは目黒区だけ(-0.02ポイント)でした。特に千代田区は、2020年の3.76%から26.03%へと大きく増えています。千代田区の募集物件数も、2020年1月の787件から2021年1月の1,619件へと、ほぼ倍になっていました。空室が増え、費用を下げて入居者を探す物件が増えたと考えられます。
このように、敷金礼金ゼロの物件の数は、その時々の空室の状況で大きく変わります。今の数は、物件を探す時点で確認してください。
高田馬場と池袋で比べると
暮らしっく不動産の地元、高田馬場と池袋の割合です(2014年11月〜2015年11月、レインズとアットホームのデータを当社でまとめたもの)。
| エリア | 敷金礼金ゼロの割合(月ごと) | 平均 |
|---|---|---|
| 高田馬場 | 4.66%〜9.01% | 約6% |
| 池袋 | 9.79%〜13.96% | 約11.5% |
高田馬場では当時、常に800件くらいの物件が募集されていたので、敷金礼金ゼロは48件くらいの計算です。かなり少ない数です。
間取りや条件を絞ると、さらに減る
2013年10月から2014年9月の高田馬場のデータでは、敷金礼金ゼロの割合は1Rで12.89%、1Kで5.36%でした。1LDKは0.27%しかありません。
| 間取り | 物件数 | 敷金礼金ゼロの割合 |
|---|---|---|
| 1R | 1,032 | 12.89% |
| 1K | 1,866 | 5.36% |
| 1DK | 311 | 3.54% |
| 1LDK | 375 | 0.27% |
| 2K | 95 | 1.05% |
| 2DK | 248 | 2.02% |
| 2LDK | 251 | 7.17% |
さらに、一人暮らしでよくある条件(駅徒歩10分以内、バス・トイレ別、室内洗濯機置き場、エアコン、フローリング、2階以上)を加えると、1Rは1,032件から195件、1Kは1,866件から695件に減りました。敷金礼金ゼロの割合も、1Rで11.80%、1Kで4.46%に下がります。条件にこだわるほど、敷金礼金ゼロの部屋は見つけにくくなります。1Rと1Kの違いは「1Rと1K」の記事をご覧ください。
多い時期は12月
同じ期間の高田馬場の1R・1Kを月別に見ると、12月に少し増える傾向がありました(1Rで15.35%)。5月はデータがありません。
気をつけたいポイント4つ
ポイント1:備考に余計な費用がないか
募集図面の備考欄に、小さく費用が書かれていることがあります。2014年に見かけた物件の例です。
- ルームクリーニング代が高い(この広さの部屋だと、当時は3万円ほどが相場)
- 室内消毒代という余計な費用がかかる(16,200円)
- 鍵交換費用も少し高い
- 駅までの徒歩分数が、実際にはもう少しかかりそうだった
敷金礼金ゼロでも、合計で考えるとまったくお得ではないことがあります。消毒代の中身は「賃貸の「消毒代」がある物件は、選ぶな!」でくわしく調べています。
ポイント2:家賃が相場より高くないか
敷金礼金がない分、家賃を高くしている物件があります。2年住めば、初期費用で浮いた分より家賃の差額のほうが大きくなることもあります。同じ駅、同じ広さ、同じくらいの築年数の部屋と家賃を比べてみましょう。東京23区の最近の家賃相場は「2026年の東京の家賃相場」で紹介しています。
ポイント3:退去時に高い請求がないか
退去時のハウスクリーニング費用が高かったり、ほかの退去費用を請求されたりすることがあります。よくわからない初期費用が入っている物件は、退去のときにもよくわからない費用を請求してくる可能性が高いと考えています。退去費用のルールは「退去費用」の記事をご覧ください。
敷金がある物件でも、一部が戻ってこない契約があるので、償却・敷引の意味も確認しておきましょう。
ポイント4:短期解約の違約金がないか
敷金礼金ゼロや初期費用が安い物件には、違約金が設定されていることがあります。多いのは「1年未満で解約した場合は○万円」のような形で、契約書の特約に書かれます。急に引越しが必要になることもあるので、契約前に確認しておきましょう。特約は「重要事項説明書」でも説明されます。
礼金ゼロの物件に違約金が設定されている例は、礼金ゼロは違約金がありますよ!でも取り上げています。
実際の募集図面で見る、悪い例とよい例
よくない例
2014年10月20日時点で、新宿区で敷金礼金ゼロで募集されていた部屋は約320件ありました。その中から2つ紹介します。
1つ目は高田馬場の部屋です。敷金礼金はゼロですが、家賃が高すぎます。高田馬場でこの広さと設備なら、当時の相場は58,000円から65,000円くらいでした。家賃で差額を埋めている例です。高田馬場の最近の家賃相場は「高田馬場の家賃相場はいくら?」でまとめています。
鍵交換代も、当時の相場15,000円ほどより高めでした。こうした物件は、退去時の見積もりも高くなる傾向があるので注意が必要です。
よい例
こちらは敷金礼金ゼロでも、よい例です。余計な費用の項目がなく、すっきりしています。選ぶならこういう部屋ですが、数はとても少ないです。
なぜ敷金礼金ゼロの物件があるのか
2013年10月17日時点で、新宿区では約10,000戸の部屋が空いていました(レインズ調べ)。部屋は余っています。
立地や設備で選ばれにくい物件は、費用で勝負するしかありません。こうして敷金礼金ゼロの物件が生まれます。2021年のように空室が増えた時期に数が増えるのも、同じ理由です。
数年前までは「敷金2ヶ月、礼金2ヶ月」が多かったのが、この記事を最初に書いた2014年には「敷金1ヶ月、礼金1ヶ月」が主流になりつつありました。さらに2022年時点では、礼金なしの物件が増えています。
まとめ:敷金礼金ゼロの物件を選ぶときのチェックリスト
- 備考欄に、消毒代などの余計な費用がないか
- 家賃が近くの似た部屋より高くないか
- 退去時のクリーニング費が高く設定されていないか
- 短期解約の違約金(1年未満は○万円など)がないか
- 更新料が高く設定されていないか
相場より家賃が安い物件や敷金礼金ゼロの物件では、更新料が高めに設定されていることもあります。更新料については「更新料」の記事にまとめています。
このチェックで問題がなければ、敷金礼金ゼロは初期費用を抑えられる、よい選択肢です。わからない項目があれば、契約前に不動産会社に確認しましょう。
