結論:賃貸の保険は、ほとんどの物件で加入が契約の条件です。大事なのは賠償の補償で、家財の補償額は自分の持ち物に合わせて選びます。

なぜ重要か:水漏れ1件で修理費20万円ほどかかった例もあり、他人への賠償は数千万円になることもあるからです。

次にすべきこと:

  • 見積もりの保険料を、補償内容と期間で比べる
  • プランや保険を選べるか、不動産会社に確認する

部屋を借りるとき、ほぼ必ず案内されるのが「火災保険」です。家財保険と呼ばれることもあります。

「なんで入らないといけないの?」「高すぎる!」という声をよく聞きます。この記事では、賃貸の保険に入る理由、補償の中身、保険料が高いと感じたときの確認ポイントを解説します。

1. 賃貸の保険は入らないといけない?

ほとんどの物件で、保険への加入が契約の条件になっています。加入しないまま契約できるかどうかは、物件の条件によって違います。どうしても入りたくない場合や、すでに自分で入っている保険がある場合は、それで条件を満たせるか不動産会社に確認しましょう。

加入が求められる理由は、借りた部屋は契約が終わったら大家さんに返さなければならないからです。借りている間に火事などで部屋を使えない状態にしてしまうと、そのまま返すことができません。そのときの備えとして保険があります。

ただ、この保険は「火事のため」だけのものではありません。ある賃貸向け保険のデータでは、事故の原因で多いのは次の順番でした(2025年の記事執筆時点)。

  1. 水漏れ
  2. 盗難
  3. 火災

火災はいちばん多い原因ではないのです。賃貸の保険は、暮らしの中のいろいろな事故に備える保険だと考えるとわかりやすいです。

災害で建物が壊れて住めなくなったときに賃貸の契約や家賃がどうなるかは、ゴジラにマンションを壊されたら?で考えています。

2. 賃貸の保険の中身

賃貸の保険は、一般的に次のような補償の組み合わせになっています。

補償 守る対象 どんなときに使うか
家財の補償 自分の持ち物 火事・水濡れ・盗難などで家具や服、家電を失ったとき
借家人賠償責任 借りている部屋(大家さん) 自分の不注意で部屋を燃やしたり水浸しにしたりして、大家さんに賠償するとき
個人賠償責任 他人(ほかの住人・通行人など) 階下への水漏れや、日常生活の事故で他人に損害を与えたとき
修理費用の補償 借りている部屋の設備 うっかり壊した設備や、空き巣に割られた窓などを直すとき

どの補償が付いているかは保険によって違うので、契約前に確認してください。

家財の補償:もらい火は誰も弁償してくれない

家財の補償で大きいのは、自分が火事を起こすことより、隣の部屋の火事に巻き込まれる「もらい火」のリスクです。

失火責任法という法律により、隣の部屋が火元であなたの部屋が燃えても、火元に重大な過失がない限り、原則として損害賠償を請求できません。大家さんの保険は建物を直すためのもので、あなたの持ち物は対象外です。この空白を埋められるのは、自分で入る家財の補償です。

「高い物は持っていない」と思う人も多いですが、部屋の物を全部新品で買い直すと考えてみてください。保険の評価では、ワンルーム(18㎡未満)の一人暮らしでも、家財の総額は200万〜300万円が目安とされています(2025年の記事執筆時点)。冷蔵庫や洗濯機、ベッドだけでなく、衣類や靴、本、食器まで含めるからです。

なお、ノートパソコンやデジカメ、携帯電話などは補償の対象外になっている保険も多いです。仕事で使っている人は、補償の範囲を必ず確認しましょう。消耗品や食品も対象外です。

借家人賠償責任:大家さんの保険会社から請求されることも

寝たばこやお風呂のあふれなど、自分の不注意で部屋を燃やしたり水浸しにしたりした場合は、元に戻す責任があります。

「大家さんも保険に入っているのでは?」と思うかもしれません。大家さんの保険会社が修理費を払った場合、その保険会社が、事故を起こした入居者に請求することがあります。これを代位求償といいます。この請求に備えるのが借家人賠償責任の補償です。

個人賠償責任:水漏れや自転車事故にも

大家さん以外の人に損害を与えたときの補償です。多いのは階下への水漏れです。洗濯機のホースが外れて、下の部屋の家具や家電を水浸しにしてしまうケースです。

日常生活の事故も対象になる保険が多く、自転車で歩行者にけがをさせた場合などにも使えることがあります。過去の自転車事故の判決では、9,266万円、9,521万円という高額な賠償が命じられた例があります。

当社の管理物件でも、実際にこんなことがありました。洗濯機の給水ホースの取り付けが悪く、少しずつ水が漏れ続けていたケースです。住んでいる人は気づかず、床下にたまった水がついに下の階へ漏れてしまいました。天井と壁の張り替えで修理費は20万円ほどになりましたが、保険に入っていたので全額補償されました。

洗濯機の排水まわりの水漏れ対策は洗濯機のエルボの記事で解説しています。

修理費用の補償:うっかりの破損に

  • 化粧品のびんを落として、洗面台にひびが入った
  • 模様替えで家具をぶつけて、ドアに穴を開けた
  • 空き巣に入られて、窓ガラスを割られた

こうした破損は、ふつうなら退去時に敷金から引かれたり、実費を請求されたりします。修理費用の補償があれば、保険で直せることがあります。

退去の立ち会いで「これは保険で直せたんですよ」とお伝えすると、残念がる方が意外といらっしゃいます。うっかり壊してしまったときは、そのままにせず、まず管理会社に相談しましょう。退去時の費用については退去費用の記事もご覧ください。

3. 保険料の目安と決まり方

保険料は、主に補償の金額で決まります。たとえば次のようなプランの保険です。

賃貸保険

この例では、賠償責任の補償額は一律1,000万円で固定です。家財の補償額をいくらにするかで、保険料が変わる仕組みになっています(2014年の記事執筆時点の例)。

賠償責任の補償は、他人に弁償するときのためのものです。ここはしっかり備えておきたい部分で、大家さんにとっても安心材料になります。

一方、家財の補償は自分の持ち物のためのものです。持ち物の量に合わない高い補償額にしても、その分の保険料がむだになります。自分の家財に合った金額を選びましょう。

保険料の一例として、2年契約・家財230万円・賠償1,000万円のプランでは、保険料は2年で15,000円でした(2025年の記事執筆時点)。1年あたり7,500円、1ヶ月あたり約625円です。

また、2014年の記事執筆時点では、当社の近隣(高田馬場周辺)の物件で、一人暮らし向けの保険料が18,000〜20,000円に設定されていることが多くありました。物件や不動産会社によって、保険料の設定には幅があります。

4. 保険料が高いと感じたら

見積書の保険料が高いと感じたら、次の順番で確認してみてください。

  1. 補償内容で比べる:家財の補償額、借家人賠償と個人賠償の金額、修理費用の補償の有無を見ます。金額だけでなく、何が付いているかで比べましょう。
  2. 期間をそろえて比べる:1年契約か2年契約かで金額は大きく変わります。1年あたり・1ヶ月あたりに直すと比べやすくなります。
  3. 家財の補償額が自分に合っているか見る:一人暮らしなのに、持ち物よりかなり大きい補償額になっていないか確認します。
  4. プランを選べるか確認する:同じ保険の中で、補償額の違うプランを選べるかを不動産会社に確認します。
  5. 指定の保険以外を選べるか確認する:物件によっては、大家さんや管理会社が保険を指定していることがあります。自分で選んだ保険で条件を満たせるかどうか、不動産会社に確認しましょう。
  6. 補償が重なっていないか見る:個人賠償責任は、すでに入っているほかの保険に付いていることがあります。重なっている場合は、不動産会社に相談してみてください。

賃貸の保険は、部屋の契約と同じタイミングで手続きすることが多く、よくわからないまま署名してしまいがちです。少しでも「おかしいな」と思ったら、契約の前に質問しましょう。説明を受け、納得してから加入することが大切です。

当社では、まずいちばん補償額の低いプランをご案内し、そこからお客様の家財に合わせて選んでいただくようにしています。

初期費用全体の見方は初期費用の記事で解説しています。

5. 途中で解約したら保険料は戻る?

賃貸向けの保険は掛け捨てです。それでも、期間の途中で引っ越して解約した場合は、残りの期間に応じて保険料の一部が戻ってくることが多いです。

ただし、戻る金額の計算方法は保険会社によって違い、返金されない契約もあります。意外と知られていないので、退去が決まったら保険の解約と返金の手続きも忘れずに確認しましょう。

まとめ

  • 賃貸の保険は、ほとんどの物件で加入が契約の条件
  • 火事だけでなく、水漏れ・盗難・うっかりの破損・他人への賠償に備える保険
  • 賠償の補償はしっかり、家財の補償額は自分の持ち物に合わせて
  • 高いと感じたら、補償内容と期間で比べ、プランや保険を選べるか不動産会社に確認する
  • 途中解約のときは、返金の手続きを確認する

納得できる内容で、後悔のない契約をしましょう。