結論:家賃は「前回と同じ」で決めず、似た条件の募集中物件を集め、初期費用や契約条件、空室期間まで比べて決めます。
なぜ重要か:当時(2014年)の大森駅の調査では、条件設定を誤った部屋が約1年空いていました。
次にすべきこと:
- 入居者と同じ条件で競合物件を探す
- 初期費用と空室期間を比べる
家賃の決め方で大切なのは、「市場調査」と「競合物件の分析」です。部屋を探している人と同じ目線で、似た条件の募集中の物件を集めます。そのうえで、家賃だけでなく初期費用や契約の条件、どのくらい空室が続いているかまで比べて、家賃を決めます。
この記事は大家さん向けの内容です。長年大家さんをしている方だと、「前回と同じで」「(不動産屋に)任せるよ」というケースも多いと思います。ただ、不動産の募集は出だしがとても大事です。あいまいな値付けは、空室が長引く原因の一つになります。
ここでは、暮らしっく不動産が実際に行っている家賃の決め方を、当時(2014年12月の記事公開時)の調査の実例で紹介します。物件の数や空室期間などの数字は、すべて当時のものです。
1. 情報収集:入居者と同じ条件で探す
まずは情報収集をします。実際に部屋を探している人の立場になって、募集する部屋と似た条件で物件を探します。このときの条件は次のとおりです。
- 京浜東北線 大森駅
- 駅から徒歩10分以内
- 専有面積18㎡以上
- 家賃6万円以下
当社では、不動産会社どうしで物件情報を共有するデータベースで、この条件にあう募集中の部屋を検索しました。
その結果、当時、市場に出ている物件は40件ありました。ただし、40件すべてがライバルというわけではありません。ここから、もう少し詳しく物件を見ていきます。
2. 競合物件を分析する
40件の中から、条件がより近い物件を詳しく見ます。募集する部屋の想定家賃は60,000円でした。
2-1. 同じ価格帯の物件
条件がほぼ同じ物件として見つけたのが、次の特徴をもつ部屋です。
- 更新料が高い
- 抗菌代で初期費用を上げている
- 鍵交換代がかかる
- 女性限定である
4以外は、入居者から見るとデメリットです。この物件と同じ家賃にすれば、勝機があると分析しました。
同じ家賃でも、初期費用が高い部屋は入居者に敬遠されます。初期費用に余計な費用を乗せないことも、大切なポイントです。入居者が初期費用をどう見ているかは「賃貸の初期費用は高すぎる?」も参考にしてください。
2-2. 同じ価格帯で、構造・設備が良い物件
同じ価格帯で、建物の構造や設備が良い物件もありました。ただし、こちらも初期費用が高くなっていました。
- 契約時に清掃代の請求:15,000円
- 火災保険のほかに24時間サポートへの加入が必須:15,000円
この2点で、初期費用が30,000円も高くなっています。設備では負けていても、初期費用にデメリットがあるので、勝機はあると分析しました。
2-3. 少し安い物件
少し安い物件も見ていきます。駅から近く、家賃も安い部屋がありました。ふつうに考えると、手ごわいライバルです。
しかし、よく見ると「定期借家契約」になっていました。定期借家契約は、契約期間が終わると更新できない契約です。長く住みたい入居者には敬遠されやすい条件です。このことから、ここまで家賃を下げなくてもよい、という判断材料になりました。
3. いつから募集されているかを調べる
ライバルになる物件が「どのくらい空いているか」も調べます。不動産会社向けのデータベースで物件の詳しい情報を見て、登録された日から、募集が始まった時期を推測します。
このとき一番長く空いていた部屋は、当時(2014年)の2月から募集されていた部屋でした。約1年も空室が続いていたことになります。
4. 空室が長い部屋の失敗から学ぶ
空室が長い部屋は、入居募集の失敗例として分析します。当時は空室率も高く、条件の決め方を誤ると、このように1年近く入居者が決まらないこともありました。
ライバル物件の調査でこうした部屋を見つけたら、「なぜ1年近く空いているのか」もあわせて考えます。当時の40件の中で、空室が長く続いていた部屋の失敗ポイントは、次の3つでした。
物件1:お風呂がない部屋(空室期間 約1年)
生活保護を受けている方の入居を想定した家賃設定とみられますが、お風呂のない部屋としては家賃が高すぎました。
物件2:定期借家の部屋(空室期間 約半年)
2-3で紹介した部屋です。更新できない定期借家契約という条件なのに、家賃の設定が高めでした。
物件3:広告を制限している部屋(価格設定も失敗)
この部屋は、ほかの不動産会社による「広告掲載」をすべて禁止していました。
貸主と借主の両方を自社で仲介する「両手仲介」を優先するあまり、ほかの会社が広告を出せず、部屋探しをしている人の目にふれにくくなっていました。その結果、空室が長くなったと考えられる典型的な例です。
募集していたのは、免許番号の数字が8という、長く営業している不動産会社でした。こうした広告の制限は、昔からのやり方を続けている会社で見かけることが多く、家賃の設定も相場とずれていることがあります。このケースでは、広告の制限と家賃設定のずれが重なり、半年も空室が続いていました。
家賃を決めるときのチェックリスト
ここまでの流れを、大家さんが確認しやすいようにまとめます。
| 手順 | 見るポイント |
|---|---|
| 1. 情報収集 | 入居者と同じ条件(駅・徒歩分数・広さ・家賃の上限)で、募集中の物件を集める |
| 2. 競合物件の分析 | 家賃だけでなく、更新料、初期費用に乗っている費用、入居条件、契約の種類(定期借家かどうか)を比べる |
| 3. 募集期間の確認 | ライバルの部屋がいつから空いているかを調べる |
| 4. 失敗例の分析 | 長く空いている部屋の原因(家賃の高さ、設備、広告の制限など)を自分の部屋に当てはめる |
大家さんが自分で調べるのが難しいところは、管理や募集を任せている不動産会社に「どの物件と比べて、この家賃にしたのか」を聞いてみるとよいでしょう。根拠を示してもらえると、家賃を決めやすくなります。
家賃以外で選ばれる工夫も考える
今回の分析では、家賃が同じでも、初期費用や契約条件の差で勝負できることがわかりました。家賃を下げる前に、余計な費用を初期費用に乗せていないか、入居者が嫌がる条件をつけていないかを見直すのも一つの方法です。
敷金・礼金を下げて募集する場合に、入居者がどこを気にするかは「敷金礼金ゼロは怪しい?」が参考になります。また、仲介の手数料や広告料の仕組みは「仲介手数料無料のからくりとは?」で紹介しています。
さいごに
家賃の決め方は、「市場調査」と「競合物件の分析」がとても大切です。空室を長引かせないためにも、しっかり調べたうえで家賃を決めることをおすすめします。
不動産の募集は、出だしが大事です。あいまいな家賃設定は、チャンスを逃す原因にもなります。この記事の数字は当時(2014年)のものなので、今の相場は募集中の物件で確かめてください。そのうえで戦略を立てて、入居募集にのぞみましょう。
