こんにちは。暮らしっく不動産の徳留です。

先日の杭打ち偽装データの事件しかり、今回の橋げたの溶接不良事件しかり、建築業界を揺るがすニュースが立て続けに表沙汰になっていますね。
今日はこのニュースを元に工事現場の品質について考えてみたいと思います。

問題の原因

なぜこのような事件が起こるのでしょうか?


どの担当者も"納期に間に合わせるために仕方なくやった。"

と答えています。
"納期に間に合わせる"これは建設業界だけにかぎらず、どの業界でも重要視されることであります。
しかも今にはじまったことではなく、正倉院展に残されている記述ネタをみましても、"納期に間に合わなさそうだから、人を増やしてほしい。"等の記述がみられ太古の昔から日本人は納期と戦ってきたと言えます。
もちろん暮らしっく不動産も同じで、ぼくがコラムの内容に困っているとよく怒られます。
"作業の効率化を...コラムの量産を..."という具合です。

スケジュールを立てるのは作業をしない人がたてるのがほとんど

工事現場の場合、スケジュールをたてる人というのは実際の作業者ではありません。
担当の現場監督であったり、もしくは番頭と呼ばれる営業さんのような人であったりします。


現場監督から「この作業を3日で?万円で終わらせてほしい。」という依頼がきたとします。
番頭はそこから人の手配をするのですが、職人さんもスキルレベルは様々。
予定の作業量の1.5倍ぐらいこなせる人もいれば予定の半分しかこなせない人もいます。
作業しない人たちが決めた3日でというのも机上の空論で、そこにたいした根拠はなく、「上司から言われたから」、「お客様の言う納期に合わせるにはその日程になってしまうから」というのがほとんどです。その上司というのも、作業する人ではありません。
建築物の完成日が決まっているので、これでやるしかない。といった具合。
やらない人たちが決めたスケジュールなのです。
過去の建築物の規模から算出したデータをもとに見積もりを出すのが一般的です。
もちろん過去の建築物のデータも無理して仕上げたものですから、タイトなスケジュールになります。同規模で以前2年で建てたものを今回は2.5年かかります。とは当然説明がつかなくなってしまうので、誰も指摘できないのです。

作業は算数のようにうまくはいかない

実際作業をしていると予定通りにいかない事がほとんどです。

  • 聞いていた規模と違う。
  • 番頭から聞いていた素材と違うので別の道具が必要。
  • 人が集まらなかったので工事専門の人材派遣会社に頼んだけど当日欠席された。
  • 人は集まったのに本職が自分一人で残りがみんな素人同然。
  • 急病。
  • ついで作業を頼まれて進まない。
  • 他業者と作業がバッティングして作業場所で作業できない。
  • 荒天etc


これを見ている皆様はそんなことしょっちゅうあるのかな?と思うかもしれませんが、工事現場は本当に色んなことがおこります。8時間の作業時間の中で、朝礼、一斉清掃、書類処理等あるわけですが、見積もり上は8時間まるまる作業をしていることになっていたりするのです。いわゆる補正係数っていうのが全然ない事がほとんどです。

それでも予定は変わらない

最初の例に出てきた3日っていうのはそれでもまず変わることはありません。
人間の心理としてそういう状況になると、どうやって終わらせるか?が大事になってきます。
品質や正確さではなく70点で合格だとしたら70点のものを量産するパターンです。
それでも間に合わないとわかれば、

"テストに出るところ(要は検査するところ)のみうまくやる。他は40点ぐらいでやろう。だってそれだけの納期も人も給料ももらってないもの。"という理論です。


仮にスケジュールのないなかで100点のものを作り続ける人がいるのか?と問われればそれは非常に少ない。
給料があがるわけでもなく褒められるわけでもない。いわゆる"自己満足な人"というのが評価になってしまうのです。誰も得をしないから誰もやらないのです。職人といえど工芸品の職人でもないかぎりサラリーマンなのです。

その結果は

これって誰が悪いのでしょうか?
作業者でしょうか?番頭でしょうか?元請けでしょうか?
ニュースを見ていると当初、作業者が故意にやったような報道がなされていましたが、次第に変わっていったような気がしませんでしたか?作業者が声を出し始めたのです。

「いやいや。この事実は元請けさんも知っていましたよね。」と。

下請けなんていくらでもいますから元請けが切るのは簡単なんですよ。
でも、作業者が声を上げ始めたことにより、元請けも無視できなくなってきた。
そして国土交通省も見過ごすわけにはいかなくなった。そしたらボロボロと建築業界の今まで暗黙の了解だった部分が膿として出てきた。という状況のような気がします。

安全第一

工事現場で使われるこの標語は元は1900年代の初頭にアメリカで産まれた言葉だそうです。
当時、劣悪な環境で働いていた労働者は労働災害が多かったそうです。
当時の会社の経営方針であった「生産第一、品質第二、安全第三」という経営方針を抜本的に改革し、「安全第一、品質第二、生産第三」にしたところ労働災害が劇的に減ったそうです。
今でこそ安全第一という部分しか残っていませんが、実は後ろに続くこんなスローガンがあったのです。

現在の世の中はどうでしょう?

「安全第一、生産第二、品質第三」のような気がします。
工場で自動化でできる作業が多いとはいっても最後はやっぱり人の手。
道具をうまく使うのも人の手。こんな時代だからこそ"品質"を考える時代なのではないかと思います。

さいごに

今日は少し暗い話題になってしまいました。

連日報道される建築業界のニュースに責任逃れしようとする元請けの人達を見ていたら、なんだかなぁと思い記事にしてみました。
せっかく住む住宅ですから少々期限が過ぎてもしっかりとした品質のものに住みたいものですね。