結論:不動産の営業マンとは、希望条件を先に伝え、その場で決めず、費用の内訳を確かめる距離感でつきあうのがいちばんです。

なぜ重要か:人が売りにくる商品は「商品の価値+売り手のキャラクター」になり、部屋そのものの良し悪しが見えにくくなるからです。

次にすべきこと:

  • 家賃の上限と譲れない条件を書き出しておく
  • 初期費用の見積もりを項目ごとに確かめる

こんにちは。暮らしっく不動産の徳留です。

物件探しで押し売りされないためには、自分の条件を先に決めておき、営業マンの話は「判断の材料」として聞くことが大切です。勢いや人柄で決めるのではなく、部屋そのものの価値で選びましょう。

この記事では、私が戸建の営業をしていたころの経験と、近江商人の「鍋蓋」の話をもとに、営業マンとの上手なつきあい方を考えます。

営業の基本は「生活が良くなるイメージ」

暮らしっく不動産は高田馬場の住宅街にあります。店番をしていると、けっこうな確率で営業の人がいろいろなものを売りにきます。コーヒーやお茶、プリンターのほか、少し変わったところではスポーツの観戦チケットや株・証券を売りに来た営業マンもいたそうです。

このコラムでも何度か書きましたが、私は昔、戸建の営業をしていました。家は食品のように毎日売れるものではないので、いろいろと試行錯誤をしなければなりませんでした。

営業の人ならよくわかると思いますが、お客さんに「買ってください」と言ってもダメなんです。

「この商品を使うと、生活がこんなふうに良くなりますよ」と、使ったときのイメージを持ってもらうことが大切です。戸建住宅でいえば、住まい方が変わるイメージを持ってもらうことです。

暮らしっく不動産にもいろいろな営業マン(特に新人)が来ます。そのたびに「上司からこのエリアを回ってこいと言われたんだろうな」と思います。もちろん、かわいそうだからと同情して買ったりはしませんが。

営業マンの4つのタイプ

これまで会ってきた営業の人は、だいたい次のタイプに分かれます。

1. 若さアピール型

おそらく会社でいちばん印象のいい若手がやってきて、「新人です」と、会社で一生懸命練習してきたであろうマニュアルやロールプレイング(営業のシミュレーション練習)どおりに話すパターンです。セリフを噛んだり、緊張してうまく話せなかったりするのも込みで、「頑張っているみたいだから契約してあげよう」と思ってもらうのを狙っていたりします。

2. ハキハキ体育会系型

行動力と情熱が売りのタイプです。とにかく声が大きいのが特徴です。飛び込み営業も苦にせず、お客さんと話す時間をとろうと必死です。

正直に言うと、私はこのタイプがあまり得意ではありません。爽やかすぎて、「この人はどこまで本音で話しているんだろう」と考えてしまうのです。会話に困るとスポーツの話をしてくれますが、私はスポーツをやらないので、話をふられても全然わかりません。

3. 知性派型

新人のころは商品知識が少ないので、人としてのキャラクターで勝負するしかありません。それでも勉強熱心な人は、知性派になることがあります。商品の細かい数値まで覚えていて、そういうところを気にするお客さんとは意気投合します。合理的な考え方をするので、むだな雑談は一切しません。

4. 雑学型

地元のネタ、鉄道、テレビ、最新の映画、歴史まで、幅広く会話ができるタイプです。ただ、浅く広くなので、細かい数値は覚えていません。雑談よりきちんとしたデータが欲しいお客さんとは、あまり仲良くなれません。

ちなみに、私はわりとこのタイプの営業マンでした。

タイプ 売りにしているもの 聞く側が気をつけたいこと
若さアピール型 一生懸命さ 同情で決めない
体育会系型 情熱・行動力 勢いに押されない
知性派型 商品知識・数値 数字の出どころを確かめる
雑学型 話しやすさ 雑談の楽しさと商品の良し悪しを分ける

どのタイプが良い・悪いということではありません。大事なのは、売り手のキャラクターと、商品そのものの価値を分けて考えることです。

近江商人と鍋蓋の話

私のいた会社の新人研修で見たビデオがあります。近江商人を描いた映画『てんびんの詩』です。記憶がおぼろげだったので、インターネットで調べてみました。

あらすじを短くまとめると、こんな話です。近江商人の家の少年が、父親から「鍋蓋を売ってこい。売れたら商業学校に行かせてやる」と言われます。少年は親戚や知人を頼ったり、うまい口上を考えたりしますが、なかなか売れません。ところが、相手の困りごとに気づき、相手の立場に立って行動したとき、はじめて鍋蓋が売れます。帰ると父親は、代々の当主も同じように最初の商いをしてきたことを明かし、少年をほめる、という物語です。

(あらすじは筆者による要約です)

モノを売るとはどういうことか、その本質をついた映画です。押し売りでも、相手の家の鍋蓋を壊すことでもなく、商品を大切に思う気持ちが相手に伝わったときに、はじめて売れる。よくできた作品ですが、全部見ようと思うととても長い時間がかかります。

ただ、このやり方がこれからの時代にも必要かと問われると、少し疑問もわきます。

欲しいモノは自分で調べて比べて買う時代

高齢の方や、実物を見られるお店が少ない地方では、人が売りに行くやり方にもまだニーズがあります。でも都心部では厳しくなっていると思います。最近は、自分でインターネットで比べて、そのままネットで支払いまで済ませてしまう人が多いからです。

そこには情熱も若さもキャラクターもありません。あるのは商品としての価値だけです。価格比較サイトを見れば、世の中の商品の最安値もすぐにわかります。そして今は、いいものはあっという間にネットで広まって、問い合わせが来ます。

人が売りにくる商品は「商品価値+売り手のキャラクター」になるので、商品そのものの本質がぼやけてしまいます。

そもそも株を売りに来て「儲かりますよ」と言われても、「じゃあ自分でやればいいのに」と言いたくなりませんか。「いいものなので広めたいんです」というのは、あくまでセールストークです。

なくなるといわれる仕事と、モノを知らない人が売る時代

この記事を書いた2015年ごろ、人工知能(AI)を研究する海外の大学の研究者が「今後10年でなくなる仕事」を予測して話題になりました。パソコンだけでなく、身につけるタイプの小さなコンピュータ(ウェアラブル端末)の発達も見越して、たくさんの仕事がコンピュータに置き換わるという予測です。

パソコンやロボットの発達はめざましく、高齢の方や地方でも、もっと簡単に比べて買える仕組みができていくかもしれません。直接営業に行く経費より、インターネットに広告を出すほうが儲かるとなれば、営業の人はいらなくなります。

一方で、仕組みさえできてしまえば、モノの本質を知らない人でも売れるようになります。これはとても危険なことです。効率だけが優先され、モノへの愛情もないまま売られていくことになるからです。

職人の腕が必要な手工芸品では、手間ひまや作り手の声が買う人から見えにくくなるおそれもあります。「月に10個しか作れないものを、質を落としてもいいから100個作って」と、モノを知らない人に言われたら、多くの職人さんは怒るでしょう。そういうジャンルは、しっかり残していくべきだと思います。そうしないと守られない文化があります。

物件探しで押し売りされないためのコツ

部屋探しも同じです。営業マンの人柄や勢いではなく、部屋そのものの価値で選ぶことが大切です。そのために、次のことを意識してみてください。

  • 条件を先に決めて伝える:家賃の上限(管理費・共益費込みかどうかも)、エリア、駅からの距離、譲れない設備を書き出し、最初に伝えましょう。条件がはっきりしていると、関係のない物件をすすめられにくくなります
  • その場で決めなくていい:「今日決めないとなくなりますよ」と言われても、焦って申し込む必要はありません。人気の物件が早く決まることはありますが、納得できないまま決めるのはおすすめしません
  • 費用は項目ごとに確かめる:見積もりに知らない項目があれば、何の費用か、外せるものかを聞いてみましょう。見方は賃貸の初期費用の記事でくわしく説明しています
  • 広告の物件が本当にあるか確かめる:問い合わせた物件が「ちょうど決まってしまった」と言われ、別の物件をすすめられることもあります。おとり物件の見分け方も参考にしてください
  • 「無料」「お得」の理由を聞く:仲介手数料が無料になる仕組みなど、お得に見える話にはたいてい理由があります。仲介手数料無料のからくりで説明しています
  • 断るときははっきり伝える:合わないと思ったら、「今回は見送ります」と短く伝えれば十分です。気をつかって曖昧にすると、連絡が続くことがあります

どんな営業トークがあるか、どこまで交渉できるかは、不動産会社や物件によって違います。気になることは遠慮せずに担当者に聞いてみてください。

暮らしっく不動産のスタンス

暮らしっく不動産では、押し売りをしないというスタンスを、私も門伝も持っています。

アドバイスやおすすめはしますが、住むのはあくまでお客様です。その人の住まい方や出せる費用を考えて、現実的で住みやすい物件を紹介するようにしています。

不動産屋の現実や裏話も、このコラムやご来店いただいたお客様には積極的にお話ししています。おとり物件を掲載している業者も多いといわれるこの業界ですが、暮らしっく不動産では一切ありません。

なるべくスマートに、最適な家を見つける。これが暮らしっく不動産のモットーです。なので、駅の近くに事務所はありませんし、窓一面に物件のチラシを何ヶ月も貼るようなこともしません。

最後は宣伝になってしまいましたが、家探しでお困りの方はお気軽にお声がけください。ご来店しなくても、メールやお問い合わせフォームからご相談いただけます。